「認知症でもだいじょうぶ」 永田久美子さんのまなざし

そんなに怖くない でもあきらめない

杉並区内にある32の敬老館が「ゆうゆう館」と名前を変え、NPOなど民間団体と区との協働事業が展開されるようになって約1年半。協働が取り入れられた14館では、それぞれに多彩な企画が実施され充実してきているので、元気な高齢者はもちろん、地域の人が多く訪れるようになりました。

そのひとつ、「ゆうゆう桃井館」で8月30日に催された講演会は、認知症についての5回連続セミナーの第1回目。講師の永田久美子さんは認知症と介護の現場をよく知るスペシャリストで、TVにも数多く出演なさっています。

いま日本で85歳以上の5人にひとり、65歳以上の約10人にひとりが認知症といわれ、総数200万人にのぼります。高血圧症や糖尿病と同じくらい珍しくないのに、必要以上に怖がられ敬遠される傾向が依然としてあります。

でもそれは認知症が正しく理解されていないからで、「人格が壊れる」とか「幼児への退行」と見るのはとんでもない間違いだということが永田さんのお話でわかりました。もう全然、こわくない。でもだからといって、あきらめることもない。

認知症を引き起こす病気はおもにアルツハイマーですが、不眠や薬害、生活環境の変化、ストレスなどが引き金になって認知症を増幅させるのだそう。難聴が原因で認知症になる例は1割もあり、補聴器はめがねと同程度に普及してよい、と永田さんはおっしゃいます。また栄養不良も大きな引き金になるのだと。

物忘れや理解・判断力の低下は、自分らしい暮らしを保つには深刻なこと。時間や場所の見当がつかなくなるのは、身体の地図が消えてゆき自分の存在が不安になる、想像以上に怖いこと。その結果としての徘徊。また逆に引きこもり。

でもそれは和らげることが可能。すなわち自信を喪失させない、できること・誇りを大事にする、恥をかかせない。その人らしさを回復させ維持させる・・・etc.

永田さんを見ていて、先人への尊敬と優しいまなざしが大事なことだと教えられました。認知症は「自分の一歩先をいっている人たち」だそうです。