安倍アントワネットと小泉ダイアナ

失敗した宰相たち

米国の同時多発テロからちょうど6年目の「9.11」が便乗テロなどなく無事に終わったと思ったら、日本で、前代未聞、あ然呆然の首相辞任劇。あれ以来TVや新聞紙上でジャーナリスト、識者、学者、ふつうの人、毎日あらゆる人が論評するので興味深いことこの上なし。

世の関心はすでに次の総裁選に移っていますが、いろんな立場の人がこの事件にコメントしていて、たまたま見つけた国会議員のブログを集めたサイトをのぞいてみると、書き手と安倍氏本人との距離の違いで激震の受け止め方が異なり、近い人ほど「その瞬間」の活写がリアル。まあ当然でしょうか。

朝日新聞に載っていた『宰相の条件』というタイトルの対談記事で、なるほどと思う表現を見つけました。国際経済が専門の大学教授、浜矩子(のりこ)さんが小泉・安倍両氏について次のように言っています。

「(辞任は)ある意味では安倍さんらしい。パンがないと訴えた民衆に『お菓子を食べたら』と言ったマリー・アントワネットのように、巷がどういう状況になっているか、いっさいわからなかった。そういう人を政治の表舞台に出したことをなんとも思わない自民党の内的腐敗も見えた。」

「小泉さんは人を育てず、自分さえ目立てばいい、という人。安倍さんがアントワネットなら、小泉さんはダイアナ元英皇太子妃。何を言っても許され、どこにいっても囲まれ、悪口を公然と言えない雰囲気を出していた。」

しょせんふたりとも民衆から遠すぎ。安倍さんは前任者や党から宰相としてちゃんと育てられてこなかった、むしろ気の毒、と同情する向きもあるけれど——。

このわずか1年弱の在任中、国会では重要な法案が次から次へと数に任せて強行採決されるという暴挙がまかり通っていたこと、その責任者がだれだったのか、私は忘れないぞ。