『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』をみる

なぜ粛清の連鎖は避けられなかったのか

いま50代以上の人なら、1972年「あさま山荘事件」の実況をテレビの画面で見た記憶があると思います。私もそう。真冬の浅間山をバックに、民宿の建物の胴体に巨大な鉄球が振り子のように打ち付けられる。そして放水。銃撃戦——。

それはまるで映画の一場面のようで、生々しいというよりは作り事のように遠いものに感じられ、ほんとうの戦慄は犯人たちが捕まった後に明らかになった事実のほうにありました。粛清として行われていた、仲間うちの連続殺人!

若松孝二監督の映画は、実在の(または実在した)人物を俳優が演じているのでドキュメンタリーではないものの、「実録」という名のとおり、荒削りのハイテンションな画面はリアルにしてものすごい迫力。3時間を超える長編ですが一瞬たりとも緩みがありません。

「過激派」の代名詞のように言われた「連合赤軍」が、1960年の安保闘争から連なる学生運動の潮流のうえでどのようにして生まれ、どういう若者たちを巻き込んで「あさま山荘」に至ったのか。運動が先鋭化するなかでなぜ粛清の連鎖は避けられなかったのか。学生の側から描こうとする監督の意思が明白です。

山岳アジトでの閉塞された集団生活、メンバーに「総括」を迫ってリンチ死に至らせる凄惨な場面と「山荘」に立てこもってからの緊迫した場面がクライマックスですが、リュックサックと銃器を担いで雪山を移動する場面に、「革命」に命を賭けた若者たちの希望と絶望的な孤独が見えるようで、私には印象に残りました。

連合赤軍リーダー3人のうちひとりは獄中自殺し2人は死刑囚として収監中。そのひとり、坂口弘の昨年刊行された歌集が週刊金曜日の書評欄に紹介されています。死刑執行のゴーサインを出す前に徹底的に資料を読み込むと言っていた鳩山法務大臣は、こういうものにも目を通すのだろうか、とふと思いました。