「啐啄同時(そったくどうじ)」15歳のヒナ鳥への祝辞

2009年3月24日 08時40分 | カテゴリー: 杉並と東京都の教育と教科書問題

みんな泣いた 中学校の卒業式で

区立中学校の卒業式がいっせいに行われた3月19日は暖かい行事日和となり、私は近隣の中学校の式に列席させていただくことにしました。

卒業生90人への証書授与が終わり、校長の式辞、教育委員会の祝辞とつづき、来賓代表としてPTA会長の祝辞。会長のKさんは「リラックスして聞いてください」と前置きし、壇上で語り始めました。

「ソッタクドウジ」という耳慣れない言葉がでてきて、「鳥が卵からかえるとき、親鳥が外からつつくのとヒナが内側からつつくタイミングが一致する」こと、と説明し「あなた方はいま殻から出てきたヒナのよう」と。

以下、友人であるKさんの許可を得て祝辞を紹介します。

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今まで、外側からつつく音を「うるさい、うるさい」と思っていた人も、内側から盛んにつつくのに「何も応えてくれない」とイライラしていた人も、時が満ちて殻から出るときが来たのです。ようこそ!外の世界へ。

ここまで成長した身体を丸めて、さぞ窮屈だったでしょう。外からの声はくぐもって、いまいちリアルに聞こえなかったかもしれません。でも、今日からは、同じ空気を震わせて、あなた方の耳に私たち大人の声が聞こえるはずです。「人の話が聴ける学年」といわれたあなたたちです、その態度をこれからも忘れないでください。

あなた方は、「中学生だからしなくてはいけないこと」や「してはいけないこと」からも、この3月いっぱいで卒業します。でも、ヒナ鳥がえさの採り方や飛び方を徐々に覚えるように、一人前の大人になるために知らなければならないことがたくさんあるでしょう。いろんな壁が立ち現れたりもするでしょう。

濡れた羽根を震わせているヒナ鳥にすぐに飛べとは誰も言いません。ゆっくりでいい、しっかり大人になってください。素直で正直な人には どんな困難なときにも必ず助け手が現れます。4月からそれぞれの道を進んでいってください。

(中略)初めてこの腕に抱いて幸せを噛みしめた日から約15年が経ち、今日ここにこうして立派に立っている子どもたちですが、まだまだ幼いひな鳥です。これからたくさんつまずいたり転んだりするでしょう。

以前、校長先生がこうおっしゃいました。「小学生は手を引いて、中学生は横について、高校生になったら後ろから坂道を登るようなのが子育てだ」と。もう、私たちは後ろから、決して転ばぬ先の杖をついたりせず、ひざを抱えてうずくまってしまった子どもには、こんな風に言える親でありたいと思います。「大丈夫、自分の足で立ち上がり、再び歩き出すだけの力は、あなた方の中にすでに備えてある」と。

子どもたちに負けないように私たちも成長していきたいと思います。
(後略)
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私は途中からどうしても涙がこらえられなりポケットからハンカチを出そうとすると、後ろから鼻をすする音が聞こえ、職員席のほうでも目を押さえている人が見え、そのうちにKさん自身も涙声になりました。

あとでKさんに聞いたところ、聞かせたい相手がいて、聞いてほしいメッセージをこめたのだそうです。やっぱり…!

こんなにみんなの心を打つ祝辞は、「聴いてほしい」という思いがあればこそだったのでしょう。