「合併」がもたらした地域自治とその課題 新見市と高知市の場合

総務財政員会の視察報告②

土佐料理は刺身、煮もの、お鮨も大皿盛り
土佐料理は刺身、煮もの、お鮨も大皿盛り
新見市でのもうひとつの調査項目は「地域審議会」。平成の大合併により現在の新見市になる前の1市4町の各エリア、すなわち市内5地域にそれぞれ設置された住民自治組織です。

5年前の合併当時は、3分の1以上を公募とする市民の委員会が市の建設計画や基本構想、各種行政計画、基金運用から各地域の予算編成、公共施設の設置、管理運営までをも所掌事務としていました。「もうひとつの議会」のようですが決定権はなく、協議するところまでです。

地域自治のモデルケースといえるような試みです。しかし2期4年(1期は2年)を過ぎて、この審議会は「地域ごと」の機関とすることをやめ昨年末の3期目から「テーマごと」の協議体に姿を変えました。

「市民全体のニーズを全市的にとらえるため」としていますが、当初の「地域ごと」の委員がモチベーションを維持しつつ主体的に参加し続けることが難しかったらしいことを、行政担当者の説明から察します。

地域自治を担う主体をめぐる課題は翌26日の視察先、高知市の「コミュニティ計画」でもあるようでした。高知市では、20年近く前から、住民による地域ごとの機関を組織して地区のコミュニティ計画づくりに取り組み、それに基づいてまちづくりをすすめています。「大合併」までに26地区で計画策定ができましたが、05年の合併後は2地区のみ。まだ12地区は未着手です。

合併を機に自治を前進させようとしたものの、自治する主体「コミュニティ計画策定市民会議」は地域ごとに温度差があり、また主体が現れないままコミュニティ計画策定が空白のままの地域もあり、行政はどう関わったらよいのか苦慮しているようでした。

「平成の大合併」が新しい自治のしくみを生み出すきっかけになるかも、と05年の合併ラッシュのころ私は、日本あちこちで起こっていた「自治する人びと」の動きに注目していました(こちら)。でもあれから5年たち、その課題が明らかになってきたことがこの2市の事例で見えました。