「その人らしさ」は人の数だけ存在する

シュッツが歌いたくなった日のこと

40年近くぶりに西荻で出会ったKさんと
40年近くぶりに西荻で出会ったKさんと
暮れのある日の夕方、西荻窪駅頭で区政報告の遊説をしているとき「○○さん?」と私の旧姓で声をかけてきた人がいました。大学時代に所属していた合唱団でアルトを歌っていたKさんです。

彼女はいまも歌っていて、駅の近くの教会でこれから翌日のクリスマスコンサートのための直前練習があるので来たの、と言います。「シュッツのクリスマス・オラトリオ。ほら、一緒に歌ったじゃない?あの曲」と。

シュッツはバロック期の宗教曲を多く書いた作曲家です。40年近く前の記憶がよみがえってきて、むしょうに歌いたくなってしまいました。家に帰って似たような雰囲気の合唱曲のCDを探し、バッハのクリスマス・オラトリオとヘンデルのメサイアをかけて夕飯の支度をしつつ思ったこと。

その日の昼間会った初老の女性が言った言葉です。「もっと歳をとったら家族に負担をかけたくないので施設に入ろうと思う。でもみんな一緒に童謡を歌わせられるのだけはイヤ」とその人は強い口調でいいました。

「ぬり絵や折り紙もダメ。そんなことさせられるなら長生きしたくない」というのを「無理やりさせるなんてことありませんよ」と笑って答えながら、その人の訴えたいことは伝わってきました。歳をとってもずっと自分らしくありたい、ということをその人は言いたかったのだと思います。

「その人らしさ」は人の数だけ存在します。超高齢社会が進行するいま、その人らしい「老いのくらし」、「死と葬」などをだれもが保障される世の中に、社会のしくみを編み上げていくにはどうしたらいいんだろう。

まずは、すまい、食事、健康など生活の基盤がしっかりしていること。「ひとりの自由」が大事にされながら最低3人以上の人とつながり、何かのときに「助けて」といえること。それから「好きなもの」があること。

そして何より、いくつになっても自分が好きでいられること。そういう人が尊敬されること——ではないだろうか。

さて、今年は選挙の年です。4月24日に予定される区議会議員選挙のカウントダウンに入りました。私も3期目に向けて合格点がとれるよう、一日一日たいせつに活動を積み上げていこうと思いを新たにしています。