八ッ場ダム視察 ダム底に沈む町のコミュニティ再生を考えた

2014年4月8日 01時54分 | カテゴリー: 環境, 自治と議会とまちづくり

 

街並みはすでになく閑散としているのに「川原湯温泉」の看板だけが残る

利根川水系の水源地にあたる群馬県長野原町に計画され国が建設を進める八ッ場ダム。「やつば」ではなく「やんば」と読みます。最初に計画が発表されたのは1952年といい、60年以上昔のことです。 

利根川の洪水に備えて水量調節のためと、首都圏の水道水・工業用水を確保するためという、もともと2つの目的で計画された巨大ダムですが、社会状況が変化した現在、これらの必要性はすでになくなっている、というのが環境問題や水問題の専門家たちの一致した見解です。 

なにしろ名勝で名高い吾妻川流域の一部と、川原湯温泉の観光地まるごと、ダム底に沈めてしまう計画です。地元住民たちは当初からまちを挙げて反対運動を展開したといいます。しかし年月が流れ、政治的な状況変化に伴ってじわじわとダム事業は動き、民主党政権の下で一度は国交大臣が「中止」を決めたものの2年後には「継続」に転じ、再び自民党政権に戻ると工事が具体的に始まって今に至ります。 

423日、生活者ネットワーク都議団のメンバーでこの現地視察に行ってきました。先の都議会では、この八ッ場ダム推進計画に対する異議もあって水道事業会計に反対票を投じているので、事業の進捗を実際に把握することが目的です。 

JR川原湯温泉駅に下り立つと、かつて駅前を賑わせていたに違いない商店街も、温泉宿の町並みもすでに消えてなくなり、観光地の面影はありませんでした。旅館の建物を取り壊したがれきがまだ撤去しきらずに残っている跡など、廃墟のようで心が痛みました。 

ここの駅も元温泉街もダム湖に沈むことになるため、JR線路は山の中をくり抜いた別ルートがすでに完成していて、今年9月には新駅が開設されるといいます。ダムの完成は2019年とのことですが、これまでも周辺の工事を進める中で地盤のゆるみや地質の性質から次つぎと問題点が噴出し、工期が遅れに遅れてきています。 

高台の地に移転した元住民たちのコミュニティ再生も、簡単なことではないでしょう。移転を余儀なくされた住民たちは、集落ごとに固まって移転したそうですが、高齢化が進む中で新たな産業振興は困難が想像されます。 

環境を破壊・激変させ産業を奪い、コミュニティを分断し、無駄に公金を投入させ続けるだけの大型公共事業の典型がここにある――と言ってしまっては現地の人たちに対して残酷すぎるとは思うものの、言葉がありません。