君が代強制裁判に控訴した都教委の処分に反対した

学校行事などで国旗掲揚と国歌斉唱が教職員に対しておしつけられる状況が、東京都において顕著です。石原都政時代にこれを実質的にルールづけた「10.23通達」から12年。この間、多くの現場教職員が自らの意思で行った違反行為に対し懲戒処分を受け、訴訟に発展した事件も少なからずありました。

 そのようななかで今年5月25日、東京地裁が都教委に対し「被処分を理由に再雇用しなかったのは裁量権の逸脱」とする敗訴の判決を出したことは快挙です。ところが都はそれを不服として控訴したため、その是非が問われた文教委員会において次のような意見を述べて反対しました。

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このたびの職務命令違反は、児童・生徒に対する体罰やいじめ、性的行為などの悪質な行為に比べると、子どもの尊厳を傷つけるなどの実害はなく、犯罪にも該当しません。むしろ、ひとりの人間としても教師としても、みずからの思想信条や良心にもとづいて行われた行為であり、憲法に保障された基本的人権にかかわる行為であると考えます。

 教育をつかさどる行政機関がそのような行為に対して過剰な処分を科すことにどのような意味があるのか、理解に苦しみます。都教委の判断に対し「客観的合理性及び社会的相当性を欠き、裁量権の範囲の逸脱またはその濫用に当たる」と指摘した東京地裁判決は、市民感覚にてらしてもきわめて妥当な司法判断であると考えます。

 生活者ネットワークはそもそも、学校行事等における君が代斉唱時の起立・斉唱等を義務付けた、いわゆる「10.23通達」そのものに対して、思想信条の自由を基本的人権として認めた憲法に抵触するものと考え、反対してきました。まして、この通達に厳格に従うことについて教育的意味をまったく見出すことができません。

 先ほどの答弁で「公教育に対する信頼を大きく損ねるものであり、及ぼす影響は計り知れない」と言われましたが、ほかのどこよりも自由が尊重されなければならない教育の場において、まるで思想犯を弾圧した戦前に逆戻りを促すかのように、自由と権利を抑圧するふるまいを続ける都教委こそ、公教育に対する信頼を大きく損ねていると申し上げなければなりません。

 都教委はこの地裁判決で命じられた判断を十分に尊重し、原告の元教職員たちに対する損害賠償額を支払うべきであり、控訴すべきではありませんでした。従って都議会生活者ネットワークは、今回の専決処分について反対とします。