「香害」そのニオイで加害者にならないために

「香害(こうがい)」という言葉を初めて知ったのは岡田幹治さんの著書の題名からですが、その岡田さんが講師を務める「香害」の学習会というので参加しました。10月28日、杉並区内で活動する消費者団体のネットワーク、消費者グループ連絡会の主催です。

最近、殺菌消臭剤、芳香柔軟剤などの人工的な香りつき商品がやけに増えたと感じるのは私だけではなかったようです。昔からあったシャンプーやコンディショナー、化粧品に加えて、やたらに「香り」をウリにする商品のCMが増えました。

そのニオイのために体調不良や健康被害で苦しむ人が多いのだそうです。シックハウス症候群や化学物質過敏症の深刻さはよく知られているのに、人工香料は減るどころか、いまや「香の質と量がこれまでとは一変し、史上例のない『香り=ニオイ社会』」、と岡田さんは言います。

マンションのベランダや窓、通気口や換気扇を通して入ってくる隣室の洗濯物のにおいによって、頭痛、吐き気、のどの腫れ、発熱、倦怠感などが生じ仕事に行けなくなってしまった人。芳香消臭剤のにおいで体調が急変した妊婦。小学校の書道の時間に墨汁によって突然、化学物質過敏症を発症した学生…。

20年近く前、「環境ホルモン」の問題が話題となり生協の活動テーマとして取り組んだ時期がありましたが、その後この言葉は聞かなくなりました。けれども「ホルモン攪乱物質」としていまも問題は存在し、とくに胎児から乳幼児までのいのちが、この物質の危険にさらされ続けています。問題はなくなりもしなければ小さくなってもいません。

ミツバチの大量死問題、というのもありました。ネオニコチノイドなどの農薬による害が強く疑われるこの問題も、本質は同じです。化学物質による複合汚染。原因は明らかですが「どの物質がどういう症状の原因か」ということを突き止めることはすでにほぼ不可能です。

この学習会のタイトルは「香害 そのニオイから身を守るために」という、岡田さんの本の題名そのままでしたが、私は「そのニオイで加害者になりたくない」。でも、気づいてみると身の回りはなんと人工的なニオイだらけなんだろうか、と暗然とします。