安ければいいだけじゃない 消費者のきもち

値上げの理由をちゃんと報道してほしい

昨年秋ごろから原油高由来の食料品値上げがじわじわひろがっていましたが、この4月からそれが一気に拡大したような感じです。このところ話題になっているのは輸入小麦の高騰。麺類やパン、菓子類の値上げが相次いでいます。

TVのニュース番組では、ついに値上げに踏み切ったうどん屋やその常連客の「食べにくる回数が減ってしまいます」という姿とか、スーパーで買い物をしている女性の「家計に響くので困ります」という声などを拾っています。

でもちょっとヘンだぞと思うのは、単純に困ってだけいる、不平だけ言っている消費者しか画面に出てこないことです。これではまるで、消費者はいつも「安ければいい」「安くさえあれば」と考えているみたいです。そうなんだろうか。

今回の物価高の原因はいろんな問題がからんでいます。温暖化防止策としてのバイオ燃料ブーム、その結果のトウモロコシ増産と小麦や大豆の減産。経済発展著しい中国が食料輸出国から輸入国に転じていることも大いに関係が。

穀物価格の高騰は動物の飼料代が上がることを意味するから、卵や肉類、牛乳の価格に直接影響します。また原油高は輸送費を押し上げるから、飼料用の穀類をほぼ全量輸入に頼っている日本ではなおさらです。

酪農業が特に苦しい状況に追い込まれていることを、生活クラブ連合会『生活と自治』やマイナーな情報誌は繰り返し伝えていますが、TVニュースや大手の新聞ではほとんど報道されません。

モノの値段が高いとき、その理由が分かれば「高くてもあえて買う」選択をする消費者はいるわけで、たとえば廃業一歩手前で踏ん張っている酪農家の牛乳や、国産のコメを飼料にした豚肉を「あえて買う」人が増えた方がいいのに、そういう人にどうしてテレビはインタビューしないのでしょう。

ただ便乗値上げもありうるから、それを消費者が理解したうえで買う・買わないの判断ができるように、適確な情報提供にメディアは力を注いでほしいものです。

写真 「林喜代種写真展」メッゾソプラノの藤村実穂子の写真の前で 4/2区役所2F区民ギャラリー