『カティンの森』映画は史実解明の力になるか

2010年4月9日 00時41分 | カテゴリー: 憲法・平和・社会, 映画・オペラ・おたのしみ

事件から70年、つくりたい「和解」の歴史

事件現場の近くで催された追悼式典
事件現場の近くで催された追悼式典
前回書いた『戦場でワルツを』と同じく『カティンの森』は、アカデミー賞外国語映画賞の候補になりながら受賞を逃した、戦争と虐殺の映画です。
 

ポーランドの巨匠、アンジェイ・ワイダ監督81歳の渾身の作。抵抗の映画作家が50年間以上も企画を温め続けたという、第2次世界大戦中の虐殺事件をもとに祖国の暗部を描き出します。描かれるエピソードもすべて事実に基づいているといい、監督の父も犠牲者のひとりだそうです。

1939年、ひと月足らずの間に西側のナチス・ドイツと東側のソ連の双方から侵略されたポーランド。東に逃げる人々の群れと西に向かう人々が鉄橋の上で出会う冒頭の場面が、行き所のない国の姿を象徴的に見せます。

1940年、ソ連の捕虜になった1万数千人ものポーランド人将校が行方不明となり、当時は謎とされていたものの3年後にカティンの森で埋められていた遺体が発見され、おそろしい事実が明るみに出たという。

しかしそれをドイツがやったと虚偽の情報を流し続けて犯罪の事実を認めなかったソ連。その抑圧下にあったポーランドでは長いこと歴史のタブーとされていた—。映画では事実を墓碑に刻印しようとしてソ連当局に捕まる遺族の女性や、発掘された遺品を命がけで極秘に調査する研究者たちが登場しますが、いずれも実際のモデルがいたのでしょうか。

圧巻は虐殺の場面。一片の感傷も誇張もなく、まるで単調な事務作業か、または牛の屠殺場のように一人またひとり、銃で頭を撃ち抜かれ穴の中に倒れ落ちていく。何層にも折り重なり土を被せられ…という画像が続きます。音楽も効果音もなく、えんえんと、これでもかこれでもかと。

事件から70年目の今年。おりしもつい先日の4月7日、ロシアの現地にポーランドからトゥスク首相が招かれて犠牲者の追悼式典が催されそうです。首相に招待されてワイダ監督も出席したと報道にありました。

主催したプーチン首相は「スターリン体制の犯罪は正当化できない」と述べ、ポーランドなど東欧諸国との関係改善への一歩、とも。これから史実の解明など課題の山積するなかで「和解は演出」との声も聞かれますが、映画がそういう動きを推し進める力になっていってほしいと考えるのはワイダ監督だけではありません。