韓国のドキュメンタリー『外泊 Weabak』をみる

ジェンダー、賃金格差に闘いを挑んだ女性たち

『外泊 Weabak』という韓国のドキュメンタリー映画をみる機会がありました。キム・ミレ監督の作品。ワーク・ライフ・バランスの学習会など、男女平等推進の活動をしている杉並女性団体連絡会による上映会です。

大規模スーパーのパートで働く500人の女性たちが、2007年から2008年にかけて不当解雇や賃金格差の改善を求めて店舗に籠城した、510日間のドラマです。レジ係の彼女たちは、自分の持ち場であるレジ台とレジ台の間のすき間に段ボールやマットを敷いて泊まり込みます。

「結婚して初めての外泊よ」と楽しそうにいう彼女。「外泊」とは「泊まり込みストライキ」のことです。家庭のよき妻、よき母だった彼女たちをカゲキな行動に踏み出させたのは、「非正規職保護法」が施行される直前に全員を解雇するという経営側の不当さ、理不尽さに対する怒りです。

夫や子どもに対する気兼ねや後ろめたさはありつつも、占拠した店内で炊き出しの食事をみんなで囲み、仲間と団結して闘うことを通して連帯感を育み、社会の問題に立ち向かいながら自分自身を突き詰めていく彼女たち。

しかしやがて労働組合や政党が関与するようになり、ストの長期化に伴い導入された警察官が実力行使に及びます。スクラムを組んで抵抗する彼女たちをごぼう抜きで引き立てる警官。これが男性ではなくて女性警官というところに、日本より進んだ韓国の男女平等システムを見ました。

またパート女性の賃金問題は日本の問題でもありますが、日本の女性たちが闘争を起こさないのはなぜだろう、とも思います。

労働闘争はけっきょく彼女たちにとってベストとは言えない形で終息することになりますが、座り込みを続けた女性が鏡に向かって化粧しながら「すっかりシミが増えたけど後悔してない」とつぶやく最後の場面が印象的でした。

そしてそこにかぶさるように流れる「We shall overcome」のメロディー。「私たちはいつか乗り越える」とジョーン・バエズが歌ったあの曲が、彼女たちの勇気と行動に寄り添うようでした。