虐待などの過酷な状況下にある10代後半の子どもの緊急避難場所、「カリヨン子どもの家」は04年、おそらく日本で初めて設立された子ども専用シェルターです。都内某所、安全のため住所は明かされていません。
子どもの人権救済センターが運営する「子どもの人権110番」に相談を寄せてきた子どもの「今晩帰るところがない」という切実な訴えが、弁護士の坪井節子さんらをシェルターづくりの挑戦へと突き動かしました。
福祉関係者や市民も巻き込んだ子ども支援の輪は、東京につづき神奈川、愛知、岡山でのシェルターにも広がり、さらには男女別のシェルター、就労支援のための自立援助ホームの開設へと発展しています。
本は、この活動にかかわる約30人の人々によってつづられています。弁護士、医師、社会福祉士、カウンセラー、そしておおぜいのスタッフ。
彼らが接した子どもたちは、いずれも簡単に触れてはいけない痛み、苦しみを抱え壮絶な過去を背負ってシェルターにやって来ます。温かい食事と安心して眠れる場が保障された子どもたちは、そこで「あなたは大事な人。ひとりにはしない」というメッセージを受け生きる力を取り戻します。
でもほんとうの問題はそのあと。退所後の居住、就職、生活をどう支援するか。なかでも困難なのは精神障がいを抱える場合だといい、行き場をなくして追い詰められたあげく閉鎖病棟に入るしかなくなったことも・・・。
児童相談所や養護施設などの従来の児童福祉施策のおよばない狭間を埋める取り組みが、人びとの熱意と「子どもが真ん中」という理念に支えられてあることをしっかり認識すべきです。そして最も重要なのは、これを政治はどう支援すべきかということ。現場からの提案は適切かつ貴重です。
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