ザルツブルクで自転車に乗る—。連れ合いがその夢に実現に向け、折りたたみ自転車のカタログを取り寄せたり近所の自転車屋さんに日参したりと、着々と準備を進めるのを他人事のようにながめていた私でしたが。
折りたたみとはいえ自転車2台はけっこうな重さで、持ち運び用バッグは飛行機内への積み下ろしで擦り切れ、後部ライトは壊れてギアは外れるし、調整に必要な工具が空港のセキュリティチェックに引っかかる、などのハプニングはありましたが、はたして、苦労しただけの甲斐はありました。
さすが環境先進国ドイツ文化圏のオーストリアだけあって、この町の自転車族に対するフレンドリーさを、身をもって実感した次第。専用道が整備されていること、無料の駐車スペースが町の至るところに設置されていることにも表れているように、自転車がまちづくりに位置づいています。
それに引き換え都内では、道路を走るにも肩身が狭い思いをしなければならず、少しの時間も停めておけない。じゃま者扱いされるわ、駐車場で料金は取られるわ…で、なんという違い。まあ単純に比較はできませんが。
今夏のザルツブルクは比較的暑かったので、ミラベル庭園内を通りぬけ、ザルツァッハ川岸の長く緩やかな坂を風切って自転車をこぐ爽快さは格別。旧市街の石畳の上では観光馬車と並んで走ります。
ホテルから劇場街まで徒歩だと往復50分かかる道のりが自転車なら全く苦にならないので、オペラも食事も自転車で、ということに結局なりました。ただそのかわり、すその長いスカートをはくのはあきらめなければなりませんでしたけれど。