ただいま上程された教育委員人事案件に対し、区議会生活者ネットワークとして、反対の立場から意見を申し述べます。
教育委員となる人に私たちが求める資質の最大のポイントは、第3定例会における教育委員人事の採決にあたって申し上げたとおり、子どもの権利について深い理解と識見を有する方であることです。大蔵雄之助氏のこれまでの教育委員活動を見聞いたしますと、子ども一人ひとりについてあるがままを丸ごと受け止めようとするまなざしが見られず、この点に関して否定せざるを得ません。
さらに、反対理由として今回どうしてもあげなければならないのは、このあと提案される宮坂公夫氏と大蔵氏おふたりの、教科書採択における教育委員会での言動です。この方々が3年前に中学校の社会科教科書として「新しい歴史教科書をつくる会」による扶桑社版を強くすすめ、採択に至ったことは、広く知られるところです。この教科書は、日本の植民地政策や侵略の歴史を美化・肯定するなど数多くの問題点が見られ、全国の教科書採択地区583のうち採択したのはわずかに杉並区と大田原市のみ、そのことを当の製作者サイド自らが「右より過ぎた」と総括しているというものです。
杉並区の教育といえば、済美教育センターの存在をはじめとして、特別支援教育へのとりくみ、食育、環境教育の推進など、さまざまな先進的な取り組みの中には敬意を表すべきものも多いと考えております。
しかしながら、このように教育熱心な風土をはぐくんできた杉並において、きわめて特異な歴史観にもとづく歴史教科書が採択されたことは、区民にとどまらず、杉並の教育に注目する全国の人々を驚かせ、落胆させました。現場の中学校教員の戸惑いや、現実にこのような教科書が中学生に与えられていることを思うと、暗澹たる気持ちになります。
いまだに尾を引くこの教科書問題をひきおこした当事者である方について、公平・公正であるべき教育委員として適任であると考えることはできません。
さらに、若い世代の任用、女性の登用を追求していただきたいことと、区長による選任という、いまの教育委員選出のシステムそのものに強く疑問を抱いていることを最後に申し添えて、反対意見といたします。