農的くらしの豊かさ 自然王国帰農塾にて

里山体験は楽し その①

ある日つれあいが「棚田」のパンフレットをひろげて見せ「ここのオーナーになりたい」と言い出したのが発端。気がついたらオーナーはさておき、「鴨川自然王国」での2泊3日の「里山帰農塾」に夫婦で参加することになっていました。

鴨川自然王国は「大地を守る会」創立者の故・藤本敏夫氏がつくった里山。農事組合法人としていまは野菜の宅配や農事に関するイベントなどいろいろ事業を展開しています。ここで年4回開かれる「帰農塾」もそのひとつ。

ひと言で説明するなら「大人の農体験キャンプ」というところでしょうか。ただしスタッフが「座学の多いのがうちの特徴」というだけあって、カリキュラムには農業誌の編集者、農的くらしの実践者たちの講義が組み込まれています。

そのなかには塾長であるジャーナリスト、高野孟さんや藤本夫人の歌手・加藤登紀子さんも。八ッ場ダムの建設反対運動にかかわるなど登紀子さんの環境問題へのコミットは、この地に根ざした発信だったんだ、と気がついた次第。

最近ちかくに転居してきた高野さんの家づくりの物語は刺激的でした。日本では電力の中央集権と並んで下水の中央集権という現実があり、高野邸がバイオチップトイレの導入により勝ち取った「水の自立」。外から来た都会もんとして、お祭りや草取り、消防団などコミュニティーに入ることのうっとうしさと大切さ。

農業は雨が降れば水の恵みがうれしい、日が照れば太陽の恵みがうれしい。そうやっていつも感謝して働けるくらしは豊かです。

塾生は私たちを含めて男性7人女性4人。一時的に都市から逃れて田舎の暮らしを体験しに来た人がほとんどかと思っていましたが、農業を始めるための具体的なノウハウを得ようと参加した人もいて、多様な農的ライフスタイルがあることを知らされ、私も10年後の人生設計を思い描く楽しみができました。