『はだしのゲン』を学校図書館に置くのは条件つきOK、という都教委の決着
中沢啓治のマンガ作品『はだしのゲン』をめぐる2種類の請願が東京都教育委員会に出され、1月9日の定例会議で審査が行われました。2種類とは、「『はだしのゲン』を図書館から排除せよ」という趣旨のものと、これとは逆に「撤去せず自由に閲覧できるように」というものです。
昨年夏、松江市で閲覧制限問題がおきたことを発端に、『はだしのゲン』は教育上有害だから子どもの目に触れないように排除せよ・撤去せよ・除去せよ・放逐せよ…など表現さまざまに執拗な声が自治体議会や教育委員会に届いています。練馬区教育委員会では昨年12月に審議にかけられましたが、足立、港、大田、西東京の各自治体にも同様の請願が出されているようです。
表現の自由の権利が保障されているこの日本の社会でそんなことありえないと思うのですが、国粋主義的な色彩の濃い安倍政権の下でやりやすいのか、『はだしのゲン』を標的に、日本の戦争犯罪や原爆の凄惨さの表現を社会的に葬り去ってしまおう、ということなのでしょうか。昨年10月の文教委員会でも、『はだしのゲン』は公害図書だから駆逐すべき、という質問が出されていました。
都教委が、国旗・国歌に関する記述、「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」というたった一文を嫌って、高校の日本史教科書から実教出版社を排除したのと同じ発想がここにはあります。
中学の社会科教科書として「新しい歴史教科書をつくる会」をわざわざ選んでいる都教委のこと、この請願は採択されてしまうのではないか、と危惧されました。
しかし、その心配は杞憂に終わりました。「撤去」の請願は却下。同時に「自由閲覧の維持」も不採択。つまり、どちらも「応じることはできません」という結論が出されました。
つまり何のことはない、いずれも不採択とし、『はだしのゲン』はこれまでどおり、というか校長がOKすれば、という条件つきで学校図書館に置いていいことになりました。
ただし、この太字部分は、私の解釈です。この日「回答」として委員会決定された文書を読むと、おそらくそういうことだろうと。なにしろこの「回答」、何が言いたいのかよくわからないのです。まるで文学。その全文は次回に――。