五輪スタジアムは現国立競技場の改修で~文教委員会の陳情審査より

ザハ・ハディト設計の国立競技場は建設費約1800億円、年間維持費は約41億円にものぼるといわれる

神宮外苑に新国立競技場を建設する計画に対し、見直しを求める議論が噴出しています。都議会にも陳情が出され、9月12日の文教委員会で審査が行われましたが、賛成少数のため不採択となりました。趣旨を採択すべきとの立場から、次のような意見を述べました。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

神宮の森は、1926年、この地区が東京都の風致地区第1号として指定されて以来、都民が守ってきた財産であり、ここに巨大過ぎる新国立競技場の建設が計画されていることについては、歴史的景観を大きく損なうこと、莫大な建設費が想定されることなどから、建築や都市計画、学者など多くの専門家が反対の声を上げています。

 昨年6月の東京都都市計画神宮外苑地区地区計画決定において、それまでの風致地区制度に基づく高さ制限を15メートルから5倍の75メートル、建ぺい率を40%から70%へと変更する大幅な緩和が行われ、異様ともいえる規模の施設建設が進められようとしています。しかし、それによって100年かけて造り上げられてきた貴重なみどりが失われることは、回避すべきと考えます。

 昨年10月に財務省主計局が示した「オリンピック・パラリンピック開催に係る国の関与について」とされる資料がインターネット上に公開されていますが、この中に、平成23年12月13日に閣議了解された事項として次のような記載があります。

 冒頭、「オリンピック・パラリンピック競技大会の開催は、国際親善、スポーツの振興等に大きな意義を有するものであり、また、東日本大震災からの復興を示すものとなるものであることから、平成32年(2020年)第32回オリンピック競技大会・第16回パラリンピック競技大会を東京都が招請することを了解する」という記述に続いて、注目すべきは次の点です。

 「現在、国・地方とも財政改革が緊急な課題であることに鑑み、簡素を旨とし、別紙に掲げる方針により対処するものとする」と書かれ、「別紙」の第1番目に「大会の開催に係る施設については、既存施設の活用を図ること」と明記されています。国は決して新設を奨励していたわけではないということです。

 さらにまた「別紙」の2番目には、「新設する施設の将来にわたる管理・運営については地元の責任と負担を主体として行われるものとすること」と記載されており、すなわち、もし新設なら、その後の数十年にわたる長い将来の維持管理やメンテナンスにかかる費用は、地元すなわち東京都が負担せよということが閣議で了解されています。施設が巨大であればあるほど維持管理費が莫大なものになることは、この都庁舎の例を見ても明らかです。 

東京都は招致自治体としての主導権を発揮し、少子高齢社会に見合ったコンパクトな施設づくりやまちづくりをすすめるべきと考えます。