アメリカの民主主義は「独裁者をつくらない」しくみ ~進藤久美子さん講演より
昨年、ヒラリー・クリントンが勝つものとばかり思い込んでいた米国大統領選をドナルド・トランプが制したことは、驚がくでした。しかし選挙中の言動がどんなに下品で好戦的、ルール無視、差別的であっても、いざ実際に大統領に就任すれば案外、常識的なところに収まっていくだろう、互角の接戦だったのだからヒラリーの政策の一部も取り入れるのではないか、という予想もありましたが…。
そんな希望的観測など見事に打ち砕くような強権的な大統領が誕生し、トランプはつい最近もシリアのアサド政権が化学兵器を使用したからという理由で空爆をしかけたり、北朝鮮に対して軍事行動をちらつかせたり…の暴走ぶり。存在感のアピールに躍起になっているかのようです。
この政権をアメリカの民主主義の側面から考察しようと、杉並・生活者ネットワークは4月15日、米国史やジェンダー・スタディーの研究者で元東洋英和女学院大学教授の進藤久美子さんの講演を聴く会を開催しました。
大統領選の出口調査によると男性全体がトランプ支持に傾き女性全体はヒラリー支持となっており、これはわかります。でも白人に限ると男女ともトランプ支持が多く、非白人は圧倒的にヒラリー、また年齢で見ると40歳代半ばまではヒラリー、高齢になるとトランプ。宗教で見るとクリスチャンはトランプ、ユダヤ系は断然ヒラリー、リベラル派はヒラリー、保守派はトランプ。
国を二分したと言われる中でも各支持層について多面的に分析すると見えるものがあること、トランプが勝った背景にある米国の「超」格差問題、膨張する金権選挙、もはや「アメリカン・ドリーム」など望めなくなった現実…などを前にしたとき、この政権の暴走は制御できるのか、という不安がこみ上げてきます。
進藤さんは、米国の立法・司法・行政の三権分立を厳格に定めた連邦制度が機能すれば、草の根運動から始まった米国の民主主義は「独裁ができないしくみ」だと言い、トランプの強権に歯止めをかけることは可能だという考えを示しました。ただし、しくみがきちんと機能すれば、という条件付きです。
米国追従路線をひた走る安倍政権がこれから先、日本をどこに連れて行くのか。トランプひとりの思惑で振り回されてはたまりません。そして都政における民主主義もまた、問い直しが必要です。