種子法廃止から考える「種子(たね)を守るということ」
2月24日、杉並の消費者グループ連絡会が企画した「種子法廃止を考える」という学習会に参加しました。主要農産物種子法(種子法)が去年国会で廃止となり、それが消費者にどのような影響を及ぼすのか、「食」の問題について発信している印鑰(いんやく)智哉さんによる講演です。
去年11月、同じテーマで聴いたジャーナリストの天笠啓祐さんは第2次世界大戦から話が始まったと記憶していますが、今回はなんと46億年前の地球の話。10億年かけて微生物が誕生、土壌が生成されて植物が育つ環境ができ…という、大きな流れに「生命の源」としての種子を捉える。時間をかけてつくりあげてきた命を守る。その一点で貫かれた講師の意志を感じました。
厚さ1センチの土がつくられるのに数百年かかるのだそうです。しかしあと60年で世界の土壌が失われるという。農業において化学肥料・農薬が多用される「緑の革命」や気候変動が、土を衰えさせ流出しやすくさせるからです。
第2次「緑の革命」と言える遺伝子組み換え技術は、化学企業が食料生産を支配するありように農業を変容させ、環境破壊と人の健康被害、生殖能力の低下を進行させています。米国で生まれる子どもの3分の1は慢性疾患やアレルギー症状に侵されているといいます。
グローバル企業が種子を独占することにより、小さな生産農家は企業から種子を買わなければならなくなります。すなわち農業は搾取され、本来「公共の財産」であるべき種子は私企業の支配下に置かれることになります。
種子を「公共の財産」とすること。それを法的に位置づけてきたのが「種子法」であり、全国に300品種以上あるコメの多様性を保持してきたのも「種子法」でした。ところが自民党安倍政権は「民間企業の投資意欲を割いてしまう」という、たったこれだけの理由で廃止してしまったのです。この法があると民間企業が排除され対等な競争にならない、という。
種子法廃止だけでなく、字面だけでも違和感大の「農業競争力支援法」、企業による農地取得を可能にする「農地法改正」、大企業が流通を仕切る「市場法廃止」、推進される遺伝子組み換え…なども視野に入れると、日本の農業の未来は暗澹たるものという気がしてきます。
しかし一方、農民の権利を保障する国連宣言や生物多様性の確立を求める動きなど、国際的潮流は確実に持続可能な農業を指向しています。私たちが「食べて支える」活動をやめないこと、市民レベルで世界的に連帯していくこと、それが大事だなあと、改めて思った次第です。