「太陽の蓋」でよみがえる「3.11のリアル」 

今年も3月11日がやってきます。2011年のあの日、3月11日午後2時46分から始まった数日間を描いた劇映画、「太陽の蓋」の上映会を2月18日、杉並の消費者グループが催しました。

あの日々の恐怖と息苦しさがよみがえってきて、体を固くして見ました。ストーリーが進行するほどに、日を追うごとに原発周辺の状況が不穏になっていき突き刺さるような怖さが緊張感とともに充満していった、不安な空気感まで改めて追体験するようでした。

菅直人、枝野幸男、福山哲郎…など、いまも実在の政治家が実名のまま当時の役職で登場し、それを俳優が演じるという「ありそうでなかった」形式。ドキュメンタリードラマというこの手法が、他のどの映画とも全然違う「3.11のリアル」を可能にしました。

政治家を含めて実在の人たちの会話は実際に言われた言葉だそうです。東電のホームページに掲載されている電話会議や国会の事故調査会の報告書、関係者の証言、当事者のブログ…などから拾い出した事実を再現したとのこと。

[太陽の蓋」製作者の橘民義さんと。橘さんはミニトークで、原発事故後数日間の官邸の状況と東電のやりとりを記録に残したいという思いでこの映画を作ったことを語った。

福島第一原発で喪失した電源の確保をめぐる一喜一憂のようす、官邸内の焦燥は、その後どうなるのか知っているだけに胸が詰まります。東電への不信と疑心暗鬼は募り、フクイチ現場に近い地元の若者も、東京で幼い子どもをもつ母親も、それぞれに直面する苦悩と絶望…。

私はだれが何と言おうと「原発を全部停めた」という一点で菅直人氏史上最良の首相だと考えている人間ですが、当時の首相の対応について確証もなく虚偽の批判をばらまき、今から5年前に福島原発は「アンダーコントロール」などと世界に向けて大ウソをついた恥ずかしい人物がいまの首相であることを心から呪います。

あれから7年たち、子どもの甲状腺がんの多発が懸念されています。フクイチでは廃炉に向けて今も毎日6,000人の作業員が働いているそうです。これからまだ30~40年もの間、人が被曝しなければ収束することのできないのが原発というシステムです。太陽の蓋というタイトルは、蓋することのできない原発の比喩でしょう。

3月3日、立憲民主党のタウンミーティングに参加し、今国会に提出するという「原発ゼロ基本法」案文を見ることができました。前文付きの6章立てです。前文を、声を出して読んでみると、遠くない将来、必ず、どうしてもこれを実現させたい、という気持ちで胸が熱くなりました。

生きているうちに「原発ゼロ」を見たい。そのためなら何だってできる。そんな気がしています。