ベアテさんに会いたい

「男女平等」を憲法に書いた人

5月3日の憲法記念日に合わせて封切られたドキュメンタリー映画『ベアテの贈り物』をまだ見ていませんが、絶対見に行こうと思います。ベアテとはベアテ・シロタ・ゴードンさんのことです。

憲法の草案作成時に「男女平等」の条文を書いたアメリカ女性のことは、日本で長く知られてきませんでした。昨年あたりから「改憲」に向けた動きが加速される一方で、必然として盛り上がった「現行の憲法を守ろう、価値を再確認しよう」とする流れのなかで、ベアテさんの存在がクローズアップされています。

当時まだ22歳の女性がGHQの起草メンバーに加わり、男女平等の精神を明文化した。それがいまの憲法24条「家族生活における個人の尊厳と両性の平等」に生きている——という物語は想像しただけでもドラマティックです。

なにしろ現憲法を「アメリカから押し付けられたものだから」ダメだ、とする人たちがいて、しかも24条は、9条ほど大きく取り上げられないものの「家庭での個人が強調されすぎ」と一部から見直し対象とみなされている部分です。彼女が、自分が関わった任務について何十年も沈黙を続けた理由はわかります。

最終的な条文は、「人権」により踏み込んだ彼女の原文からかなりカットされたそうですが、「日本の文化に合わない」などと起草会議で大反対していた日本政府側の男性たちが、よく女性の基本的権利を盛り込むことに賛成したものだと思います。そしてそれがどんなにこの憲法の価値を高めたことか。

ベアテさんは80歳を過ぎたいまもニューヨークに健在で、呼ばれてこれまでに何度も来日し、流暢な日本語で講演されています。私は昨年の講演会に行き損なってしまいました。22歳のとき日本女性の置かれた状況に深く思いを寄せ、基本的な人権の必要を「実感から」語り、文章につづった女性がどんな80代になっているのか、スクリーンでいいから今度こそ会いたい、と思います。