まず、朝日舞台芸術賞グランプリに『歌わせたい男たち』、同・秋元松代賞に主演の戸田恵子が選ばれたこと。『歌わせたい〜』は、永井愛という劇作家による、都教育委員会の国歌強制を正面から批判した昨秋の話題作です。
都立高校の保健室を舞台に、卒業式当日の悩める教員たちのドタバタをコミカルに描き、タイトルの「歌わせたい」とはずばり「君が代」のことをさします。
選考委員の山田洋次の講評がとても印象的です。「いまの日本にとってきわめて重要なメッセージを、楽しく、笑わせ、人間を深く愛しながら、明確に伝える舞台だった」。また戸田恵子について「華やかだけれど寂しくて、何の後ろ盾もなくこの時代を一人で懸命に生きている女性を、見事に奥深く表現した」。
なんて愛にあふれた講評でしょう。関係者はもちろん、国旗国歌の強制に不快感や違和感、絶望すらおぼえている人たちをも元気づけてくれます。願わくはぜひとも再演して、もっと多くの観客に、とくに都知事や都教委の人たちにみせたい。なんとか、かれらを劇場に連れて行く方法がないものでしょうか。その気になればその分のチケット代くらいすぐにカンパが集まると思うけど。
もうひとつは映画のこと。雑誌『キネマ旬報』の05年度ベストテンが発表されました。日本映画の1位は『パッチギ!』で監督賞も『パッチギ!』の井筒和幸です。井筒さんはおつれあいの律子さんが以前生協活動の仲間だったこともあり、『のど自慢』以来私はひそかにファンなのです。
日本対南北朝鮮の関係というシリアスな問題を、軽やかにパワフルに、はちきれそうな青春物語として描いたこの映画については、前にも書きました(2005年4月16日付バックナンバー)。これは若者たちにみてほしい。