2004年に国交省が「福祉有償運送のガイドライン」を示したのち、杉並区が「利用したいときに、安心して移送サービスの提供を受けることができる」体制を目指して前向きに取り組んでいる姿勢は評価できるものです。
昨年6月に設置された運営協議会では福祉有償運送団体の許可申請の前段としての協議が行われ、現在までに地域型4団体、施設型4団体の区内事業者が福祉有償運送団体として許可を受けています。
区内で高齢や障がいにより電車・バス・タクシーなどの公共交通機関での移動が困難な人の推計は約6,000人。それに対し、移動サービスとして福祉ハイヤー、リフト付タクシー、介護タクシー、訪問介護事業者、福祉有償運送団体などの年間の運行回数は合計で約34,000件です。
これが何を意味するのかというと、移動困難者が1年に平均6回弱しか外出できない、または移動のため家族に大きな負担がかかっていると考えられ、移動サービスの量がまだ不足している状況なのです。
移動サービスはまた、交通政策の面から捉えられなければなりません。2000年に制定された交通バリアフリー法は、鉄道の駅のエレベーター設置など施設整備を進めてきましたが、この法律ではSTS(スペシャル・トランスポート・サービス)すなわち移動サービスにも触れられています。
移動サービスが「福祉のまちづくり」の観点から地域の交通政策に位置づくべきであることは、以前から発言してきました。区では交通部門も加わって福祉交通システムの検討会が庁内に設置されたとのこと、杉並の福祉交通システムの構築にむけた今後の取り組みに期待するところです。