「地域密着型」小規模多機能ホーム方南を見学する

こんな施設がもっと増えてほしい

06年の介護保険制度改正によって設けられた「地域密着型サービス」は、住み慣れた「地域」と「自宅」での住まい方を支えるサービス体系です。この改正は高齢者の介護を「施設」から「地域・在宅」へ方向づけたといわれています。

小規模多機能ホーム方南」は、高齢者のサービスをさまざま展開する福祉施設の中にあります。開設は06年11月。先日初めて見学させていただきました。

同じ敷地で小規模多機能型居宅介護のほか、デイサービス、認知症対応型デイ、ショートステイも行われ、グループホームが2ユニット設置されています。また杉並区より地域包括支援センター「ケア24」の委託も受けています。

しかし管理者の福井さんのお話を聞いて分かったのは、これだけの事業を手がけ、また「よその事業所で断られたような手のかかる人も受け入れる」からここでは経営が成り立っているものの、「小規模多機能」だけでは採算がとれず厳しい状況にある事業者が多いということです。

理由の第一は、かかる人件費に比べて介護報酬が安いこと。介護保険制度の設計そのものにあります。また地域で暮らす体制整備が十分でないこと、独居や高齢者だけの世帯が多いことなど受け皿の問題も背景にはあります。

「小規模多機能」は高齢者本人というよりは「家族のため」、家族への負担軽減のシステムですが、宿泊の定員は一晩で5人、というように1日に提供できるサービスのワクには限度があります。これを納得して取り合うため、家族同士の譲り合い互助しあう仕組みを福井さんはていねいに築いてこられました。

高齢になっても家族に負担をかけずに地域で暮らせるために、地域密着型サービスの提供が増えていかなくてはなりません。事業者同士によるネットワークづくりは始まりましたが、報酬の見直しを含め制度改正の議論も必要でしょうし、意欲ある事業者が取り組んでいけるようなしくみに育てていかなくては。