その感想をひと言でいうなら——06年の教育基本改定で明確に示された流れにのって、2012年から本格実施される学習指導要領改訂版の内容がだんだん明らかになり、地方の裁量権を主張して独自性を発揮しようとする杉並区の教育が向かう先が重なりあって見える。そういうことでしょうか。
新学習指導要領に関しては、「竹島」表記問題の外交への影響が最近は話題になっていますが、問題とすべき根本はやはり、教育基本法が変えられてしまったこと。「伝統」が強調され、さんざん議論を呼んだ「愛国心」より「愛する態度」という文言が入れられたことのほうがより危険、と藤田さんは指摘します。
安倍政権が暴走した罪は大きい、といまさらにして思います。でも「教育こそ自治」をいい区独自の教育基本条例までつくろうとした杉並区が、同じ路線をなぞることないのになぜか、方向性は似たものになっている・・・。
和田中の「夜スペ」がマスメディアで多く好意的に取り上げられていた時期、藤田さんが新聞紙上で展開した批判論、「危険なところに踏み込んだ」という発言は、藤原前校長の実績を高く評価してきた人からも共感されるものでした。
四半世紀にわたって叫ばれ続けてきた「教育改革」。日本がやろうとしている「改革」の正体に藤田さんは警鐘を鳴らします。真に必要な改革は何なのか、市民側からの提案を呼びかけて今年の春、他の学者や教育実践者とともに「教育改革市民フォーラム」を立ち上げておられ、注目に値します。
「子どもの夢と誇り」「教職員の夢と誇り」を大切にしない社会の教育は失敗、というこの日の藤田さんの言葉がもつ意味は、深く重いものがあります。
写真 区役所前で打ち水 8/1