フィレンツェの休日は雨もまたよし

ザルツブルク番外編

音楽祭を一時離れ、ウィーン経由でフィレンツェに来ました。フィレンツェはイタリア語で「花の都」の意味、ブーツの形でみるとひざの上の部分に位置します。イタリアは91年ニューヨーク在住時にローマとミラノに行って以来の訪問です。当時イラン・イラク戦争の開戦直前で、銃器を手にした兵士が空港のそこかしこに立っていて、ただならぬ空気が張りつめていたのを思い出します。

さすがに今は武装兵士こそいないものの、テロ対策のセキュリティチェックの厳重なことは、ウフィッツィ美術館の入り口に空港と同様の荷物検査、金属探知システムが設置されていたほど。ペットボトルや水筒の水も持ち込み不可です。

ウフィッツィ美術館は、ボッティチェッリ、ミケランジェロ始めルネッサンスのイタリア絵画コレクションの豊富さでは世界有数といわれ、美術ファンならずともフィレンツェ観光の必見ポイント。この日8月15日は聖母被昇天の祭日でほかの美術館が休館だったこともあり、見学者でいっぱいです。

美術の教科書に載るような傑作が数多く展示され、一夜漬けの予習で訪れては申し訳ないような名所ではあったのですが、4時間かけて一巡した後はヴェッキオ橋へ。

プッチーニのオペラ『ジャンニ・スキッキ』で、若い娘ナンネッタが「いとしいあの方との結婚を許してもらえないなら、ヴェッキオ橋から身を投げて死んでしまうわ」と歌うその橋は、アルノ川にかかるフィレンツェ最古の橋で、二層建ての構造が珍しく、ここも観光ポイントです。

折から激しい雷雨に見舞われましたが、熱い石畳を冷やす恵みの雨は、それもまた悪くはありません。にわか雨を待っていたようにどこからか現れた「傘売り」たちがいずれも黒人だったことは、記憶にとどめておこうと思います。

写真 うしろに見えるのがヴェッキオ橋