夢のような「減税自治体構想」ほんとにやるの?

現行制度への挑戦、抵抗といっても

12月3日の総務財政委員会で、減税自治体構想研究会の報告書案が示されました。同委員会は、山田区長3期目選挙のマニフェストに掲げられた「減税自治体構想」について調査・研究するとして昨年設置された専門家会議です。

07年7月、08年1・7月と3回の議論を経て11月の会議に報告書案として出したもので、来年1月の第5回会議で最終稿の確認をしたら公開するようです。

「減税自治体構想」は、松下政経塾出身の区長が松下幸之助だか福沢諭吉だかの理論から想を得てマニフェストに入れたものと聞いています。

大ざっぱに単純化すると、税収入の一部を毎年積み立てていって利子を稼ぎ、その分だけ区税を減らす、もっと貯めれば80年後には税金を徴収しなくても利子だけで区政運営ができるほどになる、という夢のような構想。

研究会のシミュレーションによれば、これまでの行政水準を維持した上で、年会計の1割すなわち150億円を毎年積み立て、金利1.5%なら計算上10年後には10%の特別区民税減税が可能であり、20年後は15%減税可能という。

これだけ見れば、べつに悪くないと思う。杉並区は財政改革をすすめた結果、経常収支比率、実質収支比率、公債費比率いずれも改善、区債残高は減らして基金残高は増やし、財政状況だけ見ればかなり優秀といってよいでしょう。

だからその先、借金返済後の目標として、できるだけ貯金して将来に還元を、ということでしょうが、私がひっかかるのは「第1の意義」として「単年度主義の『使い切り予算』への挑戦であり、抵抗である。」と高らかに宣言しているところ。

単年度主義の使い切り予算の弊害と言えば、年度末に急増する道路工事とか談合温床の原因など言われるものの、それほどに力を入れてぶち壊さなければならないものだろうか、という気がします。「将来世代に正の遺産を残す選択を可能にする」という認識にも違和感があります。

単に研究テーマとして机上で議論するのはいいとして、今後の実現化に向かうのはちょっとなあ。150億円は大きいし、区長は変わるし、都区制度がどうなるかわからないし、いつどんな災害が起きて復興資金が必要になるかも分からないし、いくらインフレリスクは大丈夫といってもなあ・・・。

写真 善福寺公園の紅葉 11/24