ヴェネツィア旅行 フェニーチェ劇場を訪れる

カサノヴァの生きた18世紀の景色いまも

フェニーチェ劇場の正面。裏手は運河
フェニーチェ劇場の正面。裏手は運河
夏の休暇をとって10日間ヨーロッパに行っていました。そのうちの4日間はイタリアのヴェネツィアへ。「ベニスの商人」「ベニスに死す」のように英語の「ベニス(ヴェニス)」でもいいのだけど映画祭や美術展覧会(ビエンナーレ)では「ベネチア」「ヴェネツィア」と表記されるので、またこちらのほうが原語に近いので後者を採用することにします。

ヴェネツィアの印象を一言でいうなら「道路と同じ数ほど運河が縦横無尽に走るまち」ということです。自転車を含めて車両は締め出され、交通機関といえば船。バスもタクシーも船です。物流のためホテルや公共的な施設などは川に面して船着き場をもっている、という具合。

運河の水は臭うほどではないにせよきれいとはいえず、「水の都」という呼び名から連想されるイメージよりも「生活に必要な移動のための通路としての川」というのがほんとのところ。ですが、観光用の装飾付きゴンドラが水上を滑るさまは確かに絵になる光景です。

ホテルから歩いてすぐのところにフェニーチェ劇場があるとわかり、狂喜。なにしろ96年に放火による全焼で世界中のオペラファンを嘆かせ、03年にみごとかつての姿そのままに再建を果たし、フェニーチェ(英語ではphoenix=不死鳥)という名の通り復興を遂げた、伝説の歌劇場。そしてまた、ロッシーニ、ドニゼッティ、ヴェルディなどのイタリアオペラやブリテンのオペラも初演された、名門中の名門歌劇場なのですから。

18世紀に稀代のプレイボーイとして名をはせたカサノヴァが実際に投獄されていた牢屋も観光名所です。ユダヤ人の商人シャイロックが借金取りに通ったに違いない橋、『ベニスに死す』の主人公が美少年を追跡した小路も見つけました…といっても私の勝手な想像にすぎませんが。

芸術と文化が花開いた都市の現在はしかし、観光以外の産業はなく自然環境としては水没の危機にあり、犯罪も多いようです。その証拠に、全速力で逃げる男と追う男の捕物現場を、2日続けて目撃しました。