和田中「夜スペ」は公益事業、とする詭弁

区民の訴えを退けた東京地裁判決

刷り上がったレポートを手に区政報告。荻窪駅頭で
刷り上がったレポートを手に区政報告。荻窪駅頭で
杉並区立和田中の夜間塾、いわゆる「夜スペ」が始まったのは08年1月。当初、「天声人語」やTVの報道バラエティ番組などで取り上げられ、硬直化した公教育に風穴をあける思い切った改革かつ意欲的な試み、と好意的な評価のある一方で、問題点も指摘されました。

それは大きくいって①「できる子」だけが対象という教育の機会均等の侵害、②格安とはいえ「経済的に余裕のある家庭の子」だけが可能であり格差を拡大させる、③一営利企業への利益誘導、④公教育自らが教育を民間に委ねるという自己否定は教育破壊につながる、の4点だったと思います。

このうち③に論点を絞って学校施設の目的外使用の違法性を杉並区民が問うていた、いわゆる「夜スペ裁判」の東京地裁判決が3月30日に申し渡され、その報告会が4月3日にありました。

市民が行政を相手に訴えて勝つことはまず難しい、の常で原告敗訴となりましたが、報告では判決文が詭弁や摩訶不思議な論理に満ち溢れているという、興味深い事実がわかりました。

たとえば「この取組は広い意味で学年全体の学力の平均水準を上げるという意味で学力底上げになる」「生徒の学力向上という公共の利益のためのものである」というような物言いには首をかしげざるを得ません。

被告すなわち区側の「夜スペは公益事業なので私企業が公共施設を使っても問題はない、一部の生徒対象でも平均点が上がるならけっこう」という主張には根拠がある、という。それなら何でもありではありませんか。

前和田中校長、藤原氏のコメント。「ご心配をおかけしましたが、日本中に広がる『学校支援地域本部』の炎が消されることはありませんでした」というものです。「和田中地域本部」ではなく日本中の「学校支援地域本部」と言っているのを見てあ、と思いました。

氏はこの裁判と文科省の施策を関連付けてとらえ、もし敗訴していたら施策を後退させると考えていたようです。でもそれは違うと思う。夜スペを「地域活動」にすり替えたのは苦肉の策でしたが、その本質は民間企業を誘致し進学実績の向上を狙った事業、という面を否定できないからです。