前任者が区政に残した「遺産」を順次精算しつつある田中区長が今議会で着手したのは、「区長の多選自粛条例」。「廃止」を打ち出して10月21日から30日間パブリックコメントの手続きがとられ、本会議にかけられたのち12月2日の総務財政委員会で条例廃止の議案について審査が行われました。
この条例は、私がまだ議員でなかった7年前、生活者ネットワークも賛成して制定されました。以来、私たち生活者ネットの周辺ではこの条例の評価は高く、「廃止しなくていい」という意見が多数を占めたため、質疑ののち次のような意見を述べて反対としました。
首長の任期については、田中区長も述べておられますように、本来、その人本人が判断すべきであり、また市民の側からみれば、その選挙の投票をもって判断すべきことです。条例で定める必要があるのか、と思うところもありますが、首長が長期にわたってそのポストを占めることによる政治の硬直化や陥りがちな不祥事のリスクを回避する意味でも、権限の集中・肥大化を防ぐ意味からも、多選を避けるよう努めることの意義は大きなものがあります。
また現在の選挙制度のもとでの選挙は、現職に圧倒的に有利であるため、その被選挙権に対して制限をかけるという自粛条例は、理にかなったものと考えます。
前区長は、「杉並区長の在任期間に関する条例」の制定に至る経過で第3条「在任期間中、区長は全力で任務に務める」という趣旨の条文をわざわざ追加しておきながら、それに違反して任期途中で唐突に区政を放り出し、区民を失望させました。しかし、そのことがこの条例の価値を低めたとは言えません。
一方この条例は、区民の生活に直接の影響を及ぼすものではありませんから、あって不都合なことは何ひとつありません。
本議案は田中良という政治家個人の政治信条、あるいは理念の発信であると理解しており、その主張は主張として受け止めながら、あえていま廃止しなければならない理由を見いだすことができません。したがって、本議案に反対といたします。