なんだか、6年間の呪縛から解かれたような開放感と安ど感に浸っています。ようやく杉並区民の良識が反映された教科書になります。
朝からの猛烈な暑さのなか、庁舎前では「つくる会」推進・反対双方の市民が集会を行い、それを警備会社から派遣された警備員や警察官がとり囲むという物々しい雰囲気。会議の傍聴希望者は260人を超えていました。
私は傍聴者20人を選ぶくじに外れましたが、大部屋のモニター放送で審議の一部始終を聴きました。
女性委員の田中・對馬さんが一貫して子どもや教師の使いやすさ、現場の声を重視していたのは好ましく、また井出委員の教育者としての経験や知見、識見を織り込みながら論理的に教育論が語られていたことを頼もしく感じました。
公民教科書の審議で井出氏が「社会参加と持続可能な社会」を重視する視点から述べていたことは、宮坂委員の「あまり平和的思想はちょっと…」という発言や大蔵委員長の「少数民族は消えていくもの」「朝鮮・韓国学校は各種学校なのだから『差別』という記述は間違い(その扱いは差別にあたらない)」という見解との差が歴然です。
あらためて、どうしてこういう人たちが教育委員長(大蔵氏)や職務代理者(宮坂氏)の座にいるのか、選んだ人の見識を疑わずにいられません。選んだ人とは山田前区長であり、区議会で人事に賛成した議員たちです。
社会科のほかに私が注目していたのは家庭科です。ここでも井出氏は「家庭科は社会人として自立していく科学的要素の強い教科」と述べて議論をリードし、深く印象に残りました。
ところで前回書いた「とことん討論会」が開かれた前日、会場となった大田区の教育委員会では、歴史・公民ともに「つくる会」系の「育鵬社」版が採択されてしまいました。
全く予期されていなかったことで、関心のある多くの市民の間に衝撃が走っています。都立中高一貫のほか、藤沢市、横浜市、武蔵村山市などでも「つくる会」教科書が導入されることになり、採択率は確実に上げています。
しかし、とにかく杉並区から「つくる会」を一掃できることになったのは、超党派で地道な運動を継続させてきた市民の大きな勝利に違いありません。