里親の登録者のうち委託者(=実際に子どもの里親になっている人)は多くありません。しかし里親制度は都の制度なので、区はだれが里親として登録しているか、委託を受けているか、把握していません。そういうしくみです。
このケースの里親は、実子が二人いるうえ、仕事があまりに忙しくて里親としての時間的余裕がないので、適格かどうか疑問視する人がいました。児童相談所にそのように通報した人が複数いた、と聞きました。
でも児相は問題なしと判断して、結局子どもは死んでしまいました。虐待が実際にあったのかどうかまだわかりませんが、地域の中でその子をいろんな人がとりまくような環境ができていれば、死なないですんだのではないか。
と私が思うのは、その通報した人が杉並区の子ども家庭支援センターの存在を知らなかったからです。その人は、もし知っていたら相談していた、と言います。
地域にくらしている子なら区が関わることが必要ではないか。児相と子ども家庭支援センターが連携していないとは思いませんが、里親制度に関する限り、区はまったくカヤの外に置かれたままです。
里子はむずかしい問題を抱えていることが多いので、里親として実際に委託を受けることは、どんなに社会貢献意識が高い人でも、たいへんな苦労があることは想像に難くありません。実の親子とは質の違う悩みを抱えることになります。
そんなとき、身近な区が支援できないのはおかしいでしょう。まして、都区のあり方議論の中で、児童相談所の区への移管という方向性が出されています。里親には最低限、子ども家庭センターのことを情報提供すべきです。
里親制度に対し、厚労省が人的支援の拡充などを打ち出したニュースは朗報ですが、区はこの事件を区の問題としてとらえ、子育て家庭に対するサポート体制を見直してほしい、と思います。