日本の自殺者の年間3万1千人は糖尿病による死者1万4千人の倍以上、東京都の2010年のデータでは10代、20代、30代の死因の第1位、40代の死因の第2位、50代、60代の4位が自死によるものです。
社会保障審議会医療部会の議論では「自殺の9割に、何らかの精神疾患に罹患していた可能性」との指摘がありました。このような状況があり、区は「ゲートキーパー養成研修」など自殺予防対策に取り組んでいます。
自殺対策におけるゲートキーパーとは「地域や職場、教育、その他さまざまな分野において、身近な人の自殺のサインに気づき、その人の話を受け止め、必要に応じて専門相談機関へつなぐ、などの役割が期待される人」と定義されています。要は、死にたいと思っている人に思いとどまらせる人のことです。
東京都の調査によれば、自殺した人のおよそ7割は直前に何らかの「サイン」を発していたものの、その家族の多くは「当時は自殺のサインと思わなかった」と答えています。「いのちの門番」がさまざまな場面で必要とされるゆえんです。
多くの人と接する立場の人が、危険エリアの一歩手前での「いのちの門番」として「気づき、受け止め、つなぐ」力量とスキルを習得できるよう、この研修は続けてほしい取り組みです。
こころの病気を引き起こすきっかけや原因、またそれによって生じる問題は、自殺以外にも多岐にわたります。
虐待、いじめ、ドメスティックバイオレンス、家庭内暴力などは被害者にも加害者にもなっている実態があり、不登校、ひきこもりや過労、就労困難、貧困、薬物やアルコール依存、多重債務、ごみ屋敷、ホームレスなどの背景に精神疾患が存在していることは珍しくありません。
いずれも重い社会問題であり、重層化することで解決困難に陥りやすい問題です。しかし早い段階で手当できれば軽症ですむ可能性があるのです。