この病気の特徴のひとつは20代前半までに発症する人が大半であることですが、ある調査によれば、精神障がい者の3分の1以上は治療につながるまでに1年以上かかっています。若いときに早く適切な治療を受けられればいいが、病状が最初に現れたときに見逃されてしまうと、精神科につながるまでに時間がかかってしまう。精神科医と一般診療科医との連携がたいへん重要です。
精神疾患は、外出が難しい罹患者が多いので、専門家や支援者が当事者のもとへ出向いていくこと、「アウトリーチ」が必要です。保健福祉分野におけるアウトリーチは、地域への出張サービス、訪問支援などのことをいいます。
医師、保健師、福祉職など多職種によるアウトリーチが制度として機能することは、精神障がい者が地域で安定して、また就労して社会で生活していけるようになるために欠かせない条件です。
東京都立中部総合精神保健福祉センターは、精神保健福祉法にもとづく施設として杉並区をふくめた都内10区を管轄しています。都立松沢病院の地続きにあるこのセンターを先日訪問し、多職種の専門家チームによるアウトリーチ支援事業のことなど、お話を聞きました。
杉並区は、医療を中断してしまったなど、困難が生じている事例に対し、このアウトリーチ支援事業を積極的に活用しています。しかし、今後はより身近な地域での、一人ひとりの症状に合わせて包括的な支援を行うアウトリーチの取り組みが求められます。
いま、ACT(アクト)というアウトリーチのプログラムが、精神保健医療福祉分野で知られるようになっています。「Assertive Community Treatment」の略で、日本語では「包括型地域生活支援プログラム」と訳されています。
症状が重く地域生活が困難な当事者に対し、看護師、作業療法士、精神保健福祉士、就労支援の専門家、医師などがチームを組み、生活の場に出向いて24時間365日体制で支援のサービスを提供するプログラムです。日本では千葉県市川市で2003年に初めて開始され、いま全国の10地域で実施されていますが、今後この実践がさらに多くの地域へと広がるよう、期待しています。
この夢はもちつつ、区の施策を考えるとき、たとえば相談支援事業所がイニシアティブをとるなどして、アウトリーチのしくみを使った取り組みを展開してはどうか、と質問してみました。これに対し「今後、検討していきたい」と前向きな答弁が返ってきました。