富士山のすそ野にある地方都市。冒頭、「でら〜と」という名前の施設で催された成人祝いのもようが映されます。主役たちはいずれも24時間完全介護を必要とする重度障がい者、「でら〜と」の利用者です。そして「でら〜と」は、特別支援学校を卒業した子どもたちの居場所として設立された、通所施設です。
子どもの成長に感極まって声を詰まらせる親たちですが、子どもにどんな重い障がいがあっても、彼らが「自立して」「地域でくらす」ことをあきらめず、社会のしくみを求めて行政を動かした親たちの姿にこそ、打たれます。
「ふつうに生きる」というのは「地域で」「自立」ということでした。
ある者は夫婦でレストランを営業し、ある者は市議会議員となり、子どもを囲い込まず・子どもに縛られずに自分の人生を追求する親たちの勇気と努力。それが障がいのある子どもたちからの贈り物だということが、画面から伝わってきます。
親たちは04年に「でら〜と」をつくった5年後には隣の富士宮市に第2の事業所「らぽ〜と」を建設し、ここではさまざまな在宅サービスの拠点として事業を展開しています。社会福祉法人格も取得しました。
「でら〜と」所長の「障がいのある彼らと関わることで得られるものが財産。それを社会に還元すること」という言葉が印象に残っています。みれば必ず重度障がい者に対する見方が変わる映画です。
ほんとうの福祉って「社会のしあわせ」ということ、と思いました。残念だったのは、観客が私をいれて22人しかいなかったこと。これを読んでくださったあなた、24日まで上映しています。もし時間がとれるなら、ぜひ足を運んでください。