日本の養護施設でお父さんが迎えに来るのを待ち続けた男の子、というのがそれです。この2人組監督はそのエピソードに「少年に寄り添い見守る大人の女性」という要素を加え、こんなにあたたかな映画を創作しました。
彼ら監督の以前の作品『息子のまなざし』は少年犯罪のことだったし、『ある子供』は、出産した少女とその赤ちゃんを売ってしまう若い父親のことでした。映画をとおして親子(特に父と息子)のありようを見つめ、社会と人間の関係を突き詰めてきた作家です。
ドキュメンタリータッチというか、無名の俳優や素人を使いセンチメンタリズムを嫌って音楽も効果音も排し、状況説明すら避ける作品づくりが常です。今回も、父親が施設に預けた経緯など、少年の状況設定の説明はありません。
でも、ときに疾走・ときに快走する自転車の彼をカメラがとらえて離さないことで、少年との一体感を監督はこちらに差し出しているのだと気がつきました。いつも赤いTシャツなのが印象的。少年の生きる力の象徴のようです。赤いシャツで父を求め拒絶される彼。ギャングの手下にされ非行に手を染める彼—。
そしてそんな彼を、決してあきらめずに受けとめる「週末の里親」の女性の存在が、この映画の最大の魅力です。美容師として店をもち自立して生きる彼女は、問題行動を繰り返す「里子」のせいで恋人とあっさり別れることになるのですが、その潔さも美しい。
彼女にとっても「里子」の存在が自身の人間的成長を促したのだと思います。肉親でないからこその役割を彼女が知ったからです。自立して生きるひとは美しい、しかし人と人が依存し合って生きることもまた、いいなあと思わされます。
教訓的なことはいわないけれど、「子どもの成長に大人は欠かせない」ことを心に刻ませてくれる作品。撮ってくれた監督に感謝したい思いです。