武道必修化による柔道の授業急増で危惧される学校災害

決算委員会の質疑より③ 

何百人もの子どもが日中長いときは8時間も9時間もいる学校というところは、事故などの災害が発生しても不思議ではないんだ――スポーツ振興センターの災害共済給付データを見てあらためてそう感じました。 

同センターの共済制度は、学校の管理下でおきた事故などで医療経費が発生したときに給付される制度で、杉並区では子ども全員がもれなく対象になっています。「管理下」とは部活動、休憩時間、登下校中も対象になります。 データによれば2011年は小中学校で約1500件の給付が発生しています。

教科で一番多いのは体育です。特に気がかりなのは、今年度から中学校で武道が必修になったこと。なかでも柔道は事故が起こる頻度が非常に高いと危惧されますが、杉並区では柔道を選択した学校が23校中17校といいます。 

83年~2010年の28年間で柔道による事故は、中高生114人が死亡しています。この中には柔道の部活中だけれど熱中症による死亡、というのもありますが、投げ技や受け身の衝撃による頭部外傷が死因とされたケースが圧倒的多数であり、障がいが残ったケースも275人にのぼっています。 

これは武道が必修化になる前のことなので、今年度以降、悲惨な事故が起きないように、当然区も安全な指導については対策を講じているはずです。それでも万一重大事故がおきてしまったらどういう手続きを踏むのだろう…。 

と今回質問しようと思ったのは、スポーツ事故後に学校側の対応が保護者に不満や不信を抱かせ、訴訟に至る事件が全国であまりにも多いからです。 

ただ、質疑では触れませんでしたが、中学校で武道が必修科目とされたのは、そもそも2006年の教育基本法改定が発端です。 

当時の自民党・安倍政権のもと、「伝統と文化の尊重」がことさらに強調された内容に書き換えられた結果、教育的見地からの議論はもとよりスポーツ関係者からの要望があったわけでも、国民的な盛り上がりも皆無であったのにもかかわらず、学習指導要領に武道の必修化が盛り込まれてしまいました。教育政策のあり方として大いに問題があります。