誰のため、何のための接種か…「ワクチントーク」が投げかけた重い課題

 

子宮頸がんワクチンの問題を告発してきた宮城県の医師、佐藤荘太郎氏

子宮頸がんワクチンの副反応問題が杉並で表面化したのが今年の2月。それから、3月の杉並区議会でそね文子さんの質問を中心に「生活者ネット・みどりの未来」がこの問題をとりあげて以後の「子宮頸がんワクチン」をめぐる動きは、当初の予想を超えて広がっているものの、今こうしている間も苦痛に顔をゆがめている少女への救済策はまったく不十分です。 

重篤な副反応が高い頻度で起きていること、その症状が深刻でむごいことに対し、厚労省の専門部会がことの重大さを認めざるを得なくなり、「積極的勧奨を一時中止」を公表したのが6月14日。都議選の告示日のことでした。 

5月17日、東京・生活者ネットワークが厚労大臣にあてて「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の接種事業の中断及び中止と副反応被害者に対する救済体制整備を求める要望書」を提出し要請を行った(こちら)さい、「接種事業中止と判断するに足る医学的データが乏しい」という立場を固持していた厚労省ですが、ひと月後には大きな方針転換となったわけです。 

当事者の声がまさに「国を動かした」ことになります。とはいえ国は「中止する」とは言っておらず「積極的には勧奨しない」、しかも「一時的」だという。これでは勧めているのかやめろと言っているのか、はっきりしません。杉並区では6月14日以降に接種を受けた少女がいるそうです。医療の現場ではどんな説明がされているのでしょう。 

国の中途半端な態度に対し、「一時中止の中止」、すなわち通常事業の再開に向けた動きも活発化しており、ワクチン接種はいいことだから推進しよう、と言わんばかりの宣伝活動が目につきます。 

私は、この2月以降に知りえたさまざまな情報によって、子宮頸がんに限らず予防接種行政というものに対する見方がすっかり変わったのですが、もう何十年も前から予防接種がはらむ問題を指摘してきた人たちがいます。そういう人たちがかかわってきた「ワクチントーク全国」という団体が7月28日、講演会を開きました。 

金沢の産婦人科医、打出喜義氏の講演は、子宮頸がんという病気を説き起こしながらワクチンの必要性を考える話題に及び、「HPVワクチン定期接種化には疑義」と結論付け。また元国立公衆衛生院疫学部感染症室長の母里啓子(モリ ヒロコ)氏による講演は、1990年に専門誌に書かれた原稿を資料に、公衆衛生における予防接種のあり方そのものに疑問を投げかける、専門家ならではの重い提起でした。

 3月に発足した「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」の事務局には、いまも被害者からの電話がかかってきます。先日事務作業の手伝いに行ったのは、毎日新聞に記事が載った日でした。スタッフが受けた電話は「きょうの記事を読んだが、うちの娘もそうでしょうか」という問い合わせでした。電話の向こうでお母さまが泣き崩れているようすが想像できました。スタッフが励まし励まし、「お母さん、大丈夫よ。もう今日からは一人じゃないから」と力づけている言葉を聞きながら、被害者とその家族を一日も早く救わなければいけない、という思いを強くしました。