生きることは「住まう」こと ふるさとの会シンポジウム「いま居る場所を支援付きに」
10月15日、「ふるさとの会」が主催するシンポジウムに参加しました。「ふるさとの会」はホームレスの自立支援活動に長く取り組んできたNPOで、もともと日雇い労務者のまち、台東区山谷で炊き出し活動をしていたそうです。その活動を高齢者や障がい者なども対象にひろげてきたのは、ごく自然なことだったのでしょう。やがて「まちづくり」の視点をベースに、ホームレスに限らず社会的弱者が「地域でともに生きる」ことを支援する活動へと発展させてきています。
「ふるさとの会」のシンポジウムは、09年に群馬県の高齢者施設「たまゆら」で火事がおき入居者10人が亡くなるという事件があって以来、毎年開催されている企画だそうです。「たまゆら」は非合法的な有料老人ホームですが、生活保護受給の高齢者に対し墨田区などが入居先として紹介していた、つまり身寄りがなく財産もない認知症高齢者の「受け皿」として機能していたことがわかり、世の中にショックを与えました。
「たまゆら」の事件以来、高齢者の「住まい」「住まうこと」が重要な活動テーマとなり毎年シンポジウムを続けている、ということがこの日、何度か語られました。それを聞いて、311大震災もそうですが「社会的な大惨事を教訓とし運動がスタートする」という実例がここにもある、と確認しました。
ことしのシンポは「いま居る場所を支援付きに~地域包括ケアのなかの互助~」とタイトルがつけられ、「支援付き住宅推進会議」が共催、「社会福祉法人 東京都社会福祉協議会」が後援、となっています。
基調講演は、前厚労省の老健局長として高齢者ケア政策づくりにかかわった宮島俊彦氏。福祉先進国デンマークのシステムに学びながら、日本に合った高齢者ケアをどう確立していくかについて、「地域に住まう」ということに引き寄せて論じました。
空き家を活用して居住を確保し、フォーマルな支援とご近所の互助にもとづくインフォーマルな支援を組み合わせ、医療や福祉、介護の地域ネットワークを機能させ…高齢者や障がい者、母子家庭や失業者などのくらしを地域で支える社会システムを構築するにはいったいいくらかかるのか、という問題について宮島氏の試算は「1兆円くらい」といいます。安い、と思わず口に出てしまいました。
だってそうじゃありませんか。社会的弱者の問題が解決すれば、日本の世の中は間違いなく暮らしやすいものになり、そのためのコストと思えば1兆円なんて安いものです。
「生きる」とは「住まう」ことであり居住は人権問題だということ。それが深く胸に落ちたシンポジウムでした。