教科書選びに介入する都教委の不当なふるまい、何のため? ~文教委員会の質疑より①
10月22日、文教委員会が開かれ、都教育庁が所管する事務事業に対する質疑を行いました。ここでの時間制限は議場におけるような厳格なものではないので、気もちにややゆとりはあるものの、何かにつけて区議会とは勝手の違うやり方に戸惑いつつ、臨んだ委員会…。
最初の質問は、8月に行われた、都立高校の「日本史」の教科書採択のこと。全国の団体や市民から100件以上の抗議の請願が都教委に提出されている事件です。
この日に採択された教科書は日本史だけではありませんが、この教科だけが注目されていたのには訳があります。そこに「日の丸・君が代の圧しつけ」問題がからんでいるという、杉並区の前区長時代の中学校や都立中高一貫校の歴史教科書と根を同じくする問題が…。
発端は、ことし6月27日の都教委定例会において、新学習指導要領にもとづき編集された日本史の、ある特定の教科書を排除しようとする「見解」が議決されたこと。すなわち、「都教委の考え方と異なる」記述があるので「適切でない」という「見解」が議決されたのだと。
「都教委の考え方と異なる」とされたのは次の部分です。「…この法律によって国民に国旗掲揚、国歌斉唱などを強制するものでないことを国会審議で明らかにした。しかし一部の自治体で公務員への強制の動きがある」という部分の中の「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」。
何が「異なる」のかといえば、「国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう指導することは、児童・生徒の規範となるべき教員の責務であるとする都教育委員会の考え方と異なる」のだと、この日の答弁でした。
また「一部の自治体」とはどこを指しているとお考えか、という質問に対しては「承知していない」と教育庁は答えましたが、自分のことだと思ったからこそ過剰に反応したのではありませんか。教職員に対する「日の丸・君が代」の強制をまさに自分が実行していると自覚しているからこそ。
ともあれこの「見解」は直ちに全対象校に通知され、手続きに従って調査・研究、選定作業を進めていた各校の選定委員会への圧力になったものと思われます。各校から都教委に申請された日本史の選定教科書の中に「問題の」実教出版社版はなく、従って8月22日の定例会では、実教出版「以外」の教科書が採択されました。
一昨年まで実教出版には一定の採択実績があったことからすれば、きわめて不自然です。このことは、都教委にとっては好ましいことかもしれませんが、子どもの学ぶ権利や教育の自由が侵害された事件というべきであり、たいへん憂慮するものです。