七生養護学校「ここから裁判」、教育の自主性を認めた最高裁判決!

七生養護学校の「こころとからだの教育」で使われた教材

日野市にある都立七生(ななお)養護学校(現在は特別支援学校)で行われていた性教育「こころとからだの学習」をめぐって2005年から争われてきた裁判、「ここから裁判」の最高裁判決が11月28日言い渡され、原告側の勝訴が確定しました。

 そもそもの事件は、2003年、七生養護学校で知的障がい児に対して行われていた「こころとからだの学習」を3人の都議会議員が不適切と決めつけたことが発端です。同校では実践の積み重ねを経て、知的障がいの子どもにもわかるように創意工夫・開発した人形などを教材に性教育を実施していましたが、都議3人がそれを標的に攻撃しました。学校現場から教材を没収し、議会で「過激だ」などと一方的に非難・批判しました。

 そのうえ都教委がこれに同調し、実質上この実践は禁止、教員たちを他の学校に移動させるなどしたため、生徒からも保護者からも信頼され歓迎されてきた「こころとからだの教育」ができなくなってしまったことは、何より子どもたちにとって不幸なことでした。

 同校の元教諭たちがおこした訴えは、都議3人と都教委に対し損害賠償を求めるものですが、その本旨は、子どもたちの発達課題に目を向け真摯に取り組んだ教育活動と、教育者としての誇りを取り戻すことだったでしょう。 

最高裁の判決は、都議たちや都教委の行為は教育基本法が禁じた「教育への不当な支配」にあたるとし、「こころとからだの学習」は「望ましい取り組み方」であったと述べました。原告側はこれを「教育現場の自主性を広く認めた画期的な判決」と評価しています。

 ただし、都議らに210万円の賠償を命じた一方、教材の人形を「まるでアダルトショップ」などと不当に貶めた記事を掲載した産経新聞への請求については、退けました。 

都教委は取上げた教材を元の場所に返却し、教育の場にまっとうな性教育を取り戻さなければなりません。ある別の都立特別支援学校では、「今年4月から9月までに、中学部で性教育に関する授業は実施していない」ということです。 

それが七生裁判の影響かどうかはわかりませんが、これを機会に、特別支援教育における「性についての学び」の重要性が見直され、もっと実施されるべきです。