少なすぎます音楽ホール・劇場の女性トイレ
都議会文教委員会予算審査の質疑より④
音楽ホールや劇場でコンサート、オペラ、バレエ、演劇などの公演中、休憩時間に必ず見られるトイレ待ちの女性の長蛇の列。寒い冬場の公演ではさらにその列は長くなります。幕間の20分なり30分という決められた時間内に座席に戻る必要があるため、これらの施設特有の課題といえ、改善が図られてしかるべき、とかねがね問題意識を抱いてきました。
都有施設である上野の東京文化会館と池袋の芸術劇場について、女性用のトイレの数を事前に聞きました。文化会館大ホール(H)では、座席数2,303に対し女性トイレ数は76、芸術劇場の大Hでは1,999席に対して52、同中Hでは834座席に対し36となっています。
仮に観客が全員女性だとすると、文化会館大Hではトイレ1個あたりの人数が30.3人、芸術劇場大Hは38.4人、中H23.1人。もちろん観客すべて女性ではないですが、全国どこの劇場やホールでも言えることは、いつも女性が多いということです。この数ではまったく足りていません。対策を求めて文教委員会で質問しました。
トイレの数にどんな基準があるのか聞いたところ、音楽ホールや劇場は興行場法に位置づけられた興行場で、構造設備の基準は特別区の条例・規制で定められるとのこと。都の決まりではなくそれぞれ台東区と豊島区の規則で便器の数は決められているといいます。
しかし現状から見て、どのくらいの数が適当かという考察がされたとは思えません。観客は圧倒的に女性で、しかも中高年が多いのに、もともと絶対数が不足しているのです。私の実感では最低でも男性用の3倍の個数が必要だと思います。
また、この2館の女性トイレでは約1割が和式ですが、ニーズが高いのは洋式です。洋式を好まない人もいるのは事実ですが、高齢になって和式を全く使えない人が多くいることからかんがみて、公的施設の個室トイレはすべて洋式としても差し支えないと思います。
対応策を求めた質問に対し都は、2011年度から12年度にかけて女性トイレを増設した、混雑時にはスタッフが誘導したり男性用トイレを臨時に女性用に変更したり、などしてきた、と答えましたが十分ではありません。
女性トイレの長い列は、デパートや映画館、ドライブインでも見られます。都有施設でいえば博物館や美術館も同様ですが、短時間に集中して、次の幕が始まる前に、座席がどんなに遠くても戻っていなければならないので、深刻さが違います。
防災対策としてのトイレ問題は、阪神淡路大震災や東日本大震災での経験により重要性が認識され、かなり対策が講じられてきています。しかし劇場のトイレ問題は、これまで目が向けられてこなかったと思います。トイレが足りないのでは、最高の「おもてなし」を誇る文化都市の名が泣くというものです。