「日本は『良心的軍事拒否国家』として生きろ」という小田実の主張をいまこそ
作家であり評論家、そして平和運動家だった小田実が亡くなって7年目の今年、その全集の完成を記念してシンポジウムが7月19日に開かれました。毎年、命日である7月30日ごろに祈念集会を開いている「小田実文学と市民運動を考える会」が中心となり、集まったグループによる実行委員会が主催です。
この会のサブタイトルがすごい。「『小さな人間』=市民の大きな力で 比類のない平和憲法・瀕死の民主主義を蘇生させよう!」というものです。安倍政権の暴挙がまかり通るいまの政治状況を乗り越える知恵がまさに小田の言葉の中にある、というメッセージが凝縮されています。
小田の古い友人で作家の柴田翔が若いころの話をするというので楽しみにしていたのは私だけでなかったと思いますが、急病で来られなくなったのは残念でした。その代わり病室のベッドの上で書いたというメモがスタッフに託され、朗読されました。
東京新聞論説委員の桐山桂一さんは、78年に自分が大学生になったころ、柴田翔や高橋和己、小田実、吉本隆明を読んでいないと恥ずかしかった、しかし今の学生に「共通して読むべき本」があるか?それがないいまは不幸だ、と言います。そしていまの学生は新聞を読まない、と。
新聞を読まない今の学生、という言葉は慶応義塾大教授の話にも聞かれました。それがジャーナリズムを専攻する学生であっても、というのです。だから知的レベルがどうだとかいう話ではなかったし、私もそうは思わないのですが、気になる現象です。
小田が遺した無数の言葉のなかに、いまどきの社会情勢を読み解き問題解決のヒントがある、と気づかせてくれたのは、当日配布の冊子にあった、「日本は『良心的軍事拒否国家』として生きろ」という言葉です。
憲法第9条は西欧諸国における「良心的兵役拒否」の法制度化を国家規模によって行ったものであり、それを「良心的軍事拒否国家」という名で呼ぶ。そしてそれは世界に他に例がなく、これまでの歴史になかったものだ――という。いまの日本こそ、かみしめたい主張です。