音楽界のリーダーにもっと女性を~異国にて69年目の8.15に~夏の旅より②

今年の815日はザルツブルクで過ごしました。終戦記念日のこの日は聖母マリアが天国に召された記念日で、カトリック教信徒の多い国では「聖母被昇天祭」という祭日にあたります。早朝から教会の鐘が鳴り響き、特別ミサが催されます。インターネットのニュースで日本武道館での69年目の式典を確認してから、町なかの教会に出かけました。 

ミサはだれでも参加できます。信徒は正装またはきちんとした服装です。高齢者が多く9割くらい。カトリックの祭礼や礼拝のしきたりのわからない旅行者は傍観者でしかありませんが、音響効果がよく厳粛な場で聴く音楽には独特の味わいがあります。合唱隊による讃美歌にはパイプオルガンの伴奏がつき、管弦楽付きでモーツァルトのミサ曲が本格演奏されました。 

ミサの後はオーケストラのコンサートへ。8.15にはウィーンフィルが音楽祭の特別プログラムとして、リッカルド・ムーティーの指揮で大曲を演奏するのが慣例です。今年はシューベルトの「悲愴」とブルックナーの交響曲6番。 

古い歴史のあるオケほど男性の比率が高いのは日本でもそうですが、特にウィーンフィルは90年代末まで女性の楽団員を採用しなかったといいます。さぞ保守的な世界なのだろうと想像します。この日のシューベルトは60人くらいの中編成、ブルックナーでは約80人の大編成オケが組まれましたが、いずれも1割くらいしか女性がいません。 

シューベルトのオペラ「フィエラブラス」もR.シュトラウスの「ばらの騎士」、モーツァルトの「ドン・ジョバンニ」のときも、オケピットに入ったウィーンフィルのメンバーはざっと数えて女性がやはり1割ほど。ウィーンフィルは超のつく一流オケでその技術の高さはすばらしいのですが、女性を入れるようになって音が荒れたとか音楽的レベルが下がったという話は聞きません。そんなことあるわけないのです。 

指揮者となればもっと女性の割合が低くなるのは、たとえば演劇の演出家や舞踊の振付家、映画監督には女性が珍しくないのに比べると、音楽界がいかに他の業界とかけ離れた特異なところか、証明されているようなものです。日本の政界なみです。 

東京都が設立し運営にかかわっている東京都交響楽団はどうだろう。HPでメンバー構成を見ると、女性がけっこういることがわかりました。では指揮者はどうかといえば、日本全体を見回しても話にならないくらい少数です。女性の活躍が期待される業界がここにもあります。