大人社会の偏見がホームレスを襲う~決算特別委員会の質疑より⑫
路上や公園で野宿している人、「ホームレス」が突然、見知らぬ何者かに襲撃される――。1995年以降、都内に限っても10人の人が襲撃によって亡くなりました。
ホームレス支援をしている市民団体の調査によれば、都内約350人の野宿者のうち、4割は襲撃を受けた経験があり、その38%にあたる加害者は子どもと若者であり、75%は2人以上のグループだったといいます。
昨年8月に中学生と高校生が野宿者のテントに花火を投げつける事件が発生した江戸川区では、2009年にも2月と4月に、中学生らに襲われた野宿者が重傷を負っています。当時、少年たちは逃げる男性を執拗に追いかけ、鉄パイプなどで殴ったり角材を投げつけたりし、「こじきは人間のくず」「ゲーム感覚で痛めつけた」「怒って追いかけてくるのが面白くてやった」などと供述していました。
去年の事件でけが人が出なかったのは何よりでした。けれどもし花火を投げた先に人がいたら、と考えるとぞっとします。じっさい、投げつけた花火の火が野宿者の服に燃え移って大やけどを負ったり、至近距離から花火を発射したことが原因で片方の目を失明したり、というような深刻な事件は全国でおきています。
ホームレスが人を襲う事件はほとんどありませんが、子どもから襲われ続けているのです。子どもたちはしばしば仲間同士のグループで、遊びの延長で、野宿の場所に出向いて行き、襲っています。残虐なケースが少なくありません。
背景には、いまの大人社会のホームレスに対する偏見や蔑視があり、それが子どもたちに反映していると考えざるを得ません。子どもを加害者にしないためには、学校の授業でホームレスについて、この社会の課題と併せて、きちんと伝えることだと思います。
都教委は、全教員に配布する指導資料「人権教育プログラム」に路上生活者に関する実践事例等を掲載しているといいます。質疑では、指導に力を入れることを強く要望しました。
また、女性の野宿者についても言及しました。女性の場合、身の安全を守る意味でも、必死で身を隠しているため、実態が見えにくいのです。女性の野宿者は、政府の調査でも都の調査でも全体の3%とされていますが、民間による全国調査では7%と報告されています。
ホームレス支援活動の現場でも、女性の野宿者は増えている実感があると言われています。この問題は、女性の貧困問題としてとらえ、支援策を講じる必要があります。