不登校の現実をとらえる実態調査を~3月の文教委員会の予算審議より⑥

 

  高齢者が集う「けやきの見える家」 

不登校の子どもは、学業が中断されるだけでなく、自己肯定感が低下し孤立しがちです。小中学生では減少傾向でしたが2013年度は増加に転じており、都内の不登校児は公立小中学校で約9,500人、都立高校では約4,000人を数えます。

文科省が毎年行っている「児童生徒の問題行動調査」の中で不登校の児童生徒の概要に関して調べていますが、その状態がどのくらいの期間続いているかなど、不明な点も多くあります。そのため都教育委員会は2015年度、実態調査を行い、今後の対応策を検討するとしています。

 先ごろ文科省は、川崎市で起きた少年殺害事件を受け、被害者の中学生が不登校状態だったことを重く見て、不登校の児童生徒の安全を確認する緊急全国調査を実施しました。不登校状態であることの裏には解決困難な問題がひそんでいる可能性が示唆されています。不登校の状況を詳細に把握することはいま必要な取組みです。

 そこで具体的な取組みについて質問したところ、学校へのアンケートや不登校経験者へのヒアリングを実施し、実態を把握するとのこと。また、外部の有識者を交えた検討会を設置して、その意見も踏まえ、来年度中を目途に結果を取りまとめていくとのことでした。

 不登校には否定的なイメージがつきまといますが、一方で、不登校の子どもに対する社会の見方が確実に変化してきているのも事実です。不登校はもはや珍しいことでも、非難されるべきことでもありません。

 「学校に行けない」のではなく「行かない」のだという子もいて、不登校の子の学びの場として、いわゆる「フリースクール(FS)」が存在感を増しています。国がいま、専門家会議を設置してFS等への支援策の検討を進めているのは、長らく放置されてきた不登校の子どもの現実にようやく国が近づいてきたものと注目しています。

 今度の都の調査では、有識者による検討会の委員として、ぜひ、子どもの実態を熟知し、その心理や病理に知見を持つ専門家を選定してほしいと思います。調査によって子どもの現在を正しくとらえ、課題をあぶり出し、今後の対応に生かすことを要望しました。