孤独死によりそう英国役人の静かな人生 「おみおくりの作法」

統一地方選挙が終わり連休中に見た映画のひとつが、英国の「おみおくりの作法」です。日本の民生委員にあたるような役人が孤独死の人の葬儀を執り行うお話。孤独死が日本だけのことでないのは、個人主義の歴史の長さでは日本の比でない英国だから、考えてみれば当然でした。

 故人の遺した数少ない情報から宗教を調べ、その葬儀にふさわしい音楽を選び、ただひとりの参列者となって、生前会ったことがない故人の、人としての尊厳を大事に、真摯にその死を悼み弔う。単調で几帳面な生活を送る彼もまた、ひとり暮らしです。

原題は「STILL LIFE=静かな人生(生活)」です。つましく質素で生真面目、清潔だけれどおしゃれや贅沢なことには縁がなく、でも穏やかな中年男性の「静かな人生」。「おみおくりの作法」という題名は、大ヒットした日本映画「おくりびと」を意識してつけたのでしょうか。でも私にはグレン・クローズが男装で生きるウェイターを演じた英国映画「アルバート氏の人生」と同じ空気をこの映画から感じ取りました。

 物語は、そんな彼の生活にも変化の波が訪れ、心躍る出会いがあり、…というところであっけなく終幕を迎えてしまいます。変化というのは、彼のていねいな仕事ぶりが上司から非効率・非経済的とみなされ、解雇を言い渡されてしまったからです。 

でも最後に監督は彼に対してすてきな贈り物を用意していました。そしてそれは、私たち観客にとってもうれしいサプライズでした。 

さて、映画を観終わって、日本での孤独死の場合にも、その死を弔い埋葬までを仕事として請け負う、という事業が行政の後押しでできないものだろうか――と、考えています。