児相に期待される里親サポート ~予算特別委員会の質疑より7
昨年4月、都は社会的擁護施策推進計画を策定し、2029年度までに社会的養護に占める家庭的養護の割合の目標をおおむね6割と設定しました。養育家庭への委託を増やしていきたいところですが、それほど伸びていません。
都における養育家庭の登録数が10年前と現在でそれぞれどうなっているか質問したところ、2005年度末に386家庭、2014年度末には475家庭でした。養育家庭への委託児童数については、2005年度末に349人、2014年度末には347人であるとのことです。
里親家庭数が89家庭も増えている一方、委託児童数が横ばいということは、せっかく養育家庭になって社会的養護を担おうという都民の熱意が生かされていないということであり、残念です。
委託までの経過を都は、「児童の福祉を第一に考え、年齢、生育歴、心身の発達状況、保護者の家庭引き取りの可能性など、児童一人ひとりの状況を総合的に勘案し決定する」と説明します。
委託数が登録家庭数ほど伸びない理由については、特に乳幼児の場合など、実親が「子どもに会えなくなる」という思いから承諾しない場合があることと、虐待などにより心に深い傷を受け情緒的な課題を抱えているため専門的なケアが必要な子どもが増えていること、などを挙げました。
児童相談所は、措置委託にあたって「まずは養育家庭等への委託を検討」し、養育家庭への委託に不安を抱く実親に対しては、家庭的な環境が児童の成長を促すため養育家庭委託が望ましいことなどを説明するそうです。
専門家が指摘しているように、諸外国と比べて日本のしくみは実親優先主義であり、子どもの福祉より親の意思が尊重されるため、養育家庭委託を難しくしています。
実親から承諾を得るため児童相談所が努力するのと同時に、子どもは社会全体で育てていくものだから里親の下で育つことは珍しいことではない、という状況をつくり出していくための普及啓発は欠かせません。
そして、里親候補に登録してから委託に結びつくまでに何段ものステップを踏み、時間をかけ、委託後はまたさらに養育家庭をサポートし続ける役割を児相は担うことになります。この課程をショートカットすることはかつて杉並で起きたような不幸な事件を繰り返すことになります。里親OBや民間団体などの力も借りながら、養育家庭をしっかりサポートしてほしいと思います。