おだやかに進む「革命」へのリスペクト
生活クラブ生協が登場し協賛もしているドキュメンタリー『おだやかな革命』は、滋味豊かなスープのような、心と体にじんわり効く映画です。秋田、福島、岐阜、岡山の各地で「おだやかに」革命を起こす人びとへの渡辺智史監督のまなざしがリスペクトに満ちています。
2011年の東日本大震災は社会システムのありようへの問い直しを迫り、私たち一人ひとりが生活スタイルの転換を図る動機となりました。日々消費するだけの生活から、持続可能な循環システムの輪の中に身を置く生活へ。そのことへの共感がまずあります。
映画の中で生活クラブ生協は、秋田県で風力発電を起こした事業者として、最初のエピソードに登場します。日本海に面して秋田市と山形県鶴岡市との中間にあたる「にかほ市」に風車を建設し、首都圏の生協組合員に電気を届ける事業者です。
組合員は建設資金としてカンパを拠出し、当地の産業を応援するためラーメンなどの加工品を地元の生産者とともに開発し、現地に赴いて風車の稼働状況をチェックします。風車は自分たちがほしい電気の生産現場であり、自分たちはその運営主体だからです。
電気には色もにおいもないけれど、その原材料には歴然と差があります。原子力によるものか否か、化石燃料によるものか否か。持続可能か。
人に被ばくを強いず環境を破壊せず生物の多様性を侵さずCO²を排出しない電気がいい。安全・安心な食を求めて生産者と連携してきた人たちにとって、電気も同じ「生活に必要な材」。ならば原材料にこだわり生産にかかわるのは当然のこと。――とは言えほんとうに実践してしまうのが生活クラブのすごさだなあ、と改めて思わされます。
原発事故のあった福島県では、酒蔵の当主や畜産農家がそれぞれ太陽光発電事業を始めたケースが描かれます。ソーラーシェアしながら畜産を再興するようすは、他のドキュメンタリー映画やTVでも紹介されていました。
岐阜では、東京から移住してきた若い夫妻が、小水力発電事業を立ち上げ、また地域の伝統文化を掘り起こして洋品店を開業するなど、人口減少が進む地方都市に新鮮な風を吹き込みます。
監督の前作『よみがえりのレシピ』は、在来作物の種子を守る人たちを描いて「農」と「食」を追った作品でした。日本で種子法が廃止されてしまったことについて最近学んだところ(こちら)ですが、監督もきっと無念の思いでしょう。